うちの会社では、賞与の支給日に在籍している社員にのみ賞与を支給している。賞与の支給日の2週間前に定年退職するAさんにも、この要件は適用されるのかな?(給与担当者のギモン)
**
社員が自己都合で辞めるのなら、支給日に在籍していないということで賞与が支給されないのは仕方のないこと(本人もわかっていて退職するはず)。
・・・だとしても、定年退職者は自分の意思で退職するわけではないのに、同じように扱っていいのものだろうか(運が悪くない?(゚Д゚;))と、判断に迷う担当者さんです。
そこで今回は、そもそも賞与の支給日在籍要件とはどのようなことなのか、そして定年退職者にも適用されるのか、詳しく確認していきたいと思います。
そもそも賞与の支給日在籍要件って?
賞与の支給日在籍要件とは、算定対象期間のすべてまたは一部に在籍していても、支給日に在籍していなければ支給されないことをいいます。
算定対象期間の一部に在籍していたにもかかわらず、たまたま支給日に在籍していなかったがために賞与が支給されないのは不公平では?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ここでポイントとなるのが、「賞与とは(法的に)どういう性格のものなのか?」という点です。
賞与は、社員の働きぶりに対応する報酬という側面だけでなく、「将来に向けてのモチベーションを引き出す策」としての性格もあると考えられます。
「賞与は賃金の後払い」としてみると、一定期間は在籍していたのだから、たとえ支給日に在籍していなくても支給するものだと思われます。ですが、「将来に向けてのモチベーションアップ策」という点からみると、退職していなくなった人に対しては理屈が合いません。
そのため、一般的に賞与の支給日在籍要件は有効だとして認められています。判例でも、賞与の支給日在籍要件が就業規則において定められており、周知がなされていれば、その規定は有効だとしています。
定年退職者はどうなる?
前段でお伝えしたように、自らの意思で退職した自己都合退職者には、賞与の支給日在籍要件が適用され、賞与が不支給となってもやむかたなし、といえるでしょう。
では、定年退職のように退職日を自分で選択できない場合はどうなるのでしょうか。
定年退職者についても、賞与が将来に対するモチベーションアップ策であることには変わりはありません。
また、定年退職者本人にしても、賞与の支給日よりも先に定年を迎えることをわかっているはずなので、賞与の不支給が「不測の事態」ということにはなりません。賞与を支給しなくても、社員に不測の損害を与えることにはならないでしょう。
このようなことから、判例においても定年退職者に賞与の支給日在籍要件を適用することを認めています。
**
補足ですが、賞与の支給日在籍要件でいう「支給日」とは、賞与が支給される予定日のことをいいます。
もし、何らかの事情で支給日がずれて遅れた場合には、たとえ(その遅れた)現実の支給日前に退職していたとしても、支給予定日に在籍していれば、賞与を受け取る権利はアリとなりますから、注意が必要です。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事