うちの会社では午前と午後の営業時間が違うので、それに合わせて半日休を設定している。午前のほうが短いから「午前休は午後半休より損」との声もあるが「家族の通院の付き添いで午前休は助かる」との声もあり、いっそのこと半休は午前休だけにしようか?
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年休を取得しやすい環境を整えようとする経営者や人事担当者からご相談をいただきます。
なかでも、半日単位年休は「日単位年休」のなかでの任意の制度なので、どこまで自由に運用を決めてもよいのか?と、判断に迷われるケースは多いようです。
そこで今回は、半日単位年休の取得を午前中に限定してもよいのかどうかについて、詳しく確認していきたいと思います。
半日単位年休とは
会社には、社員に年次有給休暇を半日単位で付与する義務はなく、会社が認めれば半日単位で付与しても差し支えない、というのが半日単位年休の趣旨です。
ここで問題となるのが、「半日単位」とはどのようなものをいうのか?ということです。
これについては、企業社会の一般的な取扱いにしたがって、原則として午前半日は始業時刻からランチ休憩まで、午後半日はランチ休憩後から終業時刻までを指すものとして解釈されています。
そうするとたとえば、下記のように午前の半日と午後の半日では労働時間の長さが異なることもありえます。
- 午前の半日・・・始業時刻9時00分~ランチ休憩12時00分の3時間
- 午後の半日・・・ランチ休憩終了13時00分~終業時刻18時00分の5時間
ですが、いずれも0.5日分の半休の取得として取り扱うことに問題はないとされています。
半日単位年休を午前だけにしてもいいのか
では、本題の半日単位年休の取得を午前中のみに限定してもいいのか、という点についてです。前述のように、半日単位年休を付与するかどうかは任意であり、会社の判断に任せられています。
そうすると、半日単位年休を午前だけにしても問題がないように思われますが、ここで注意しておきたいのが、そもそもの年次有給休暇の趣旨です。
年次有給休暇は、社員を休養させることで仕事に対するやる気を回復させるためにあるものです。そこで、午前中だけに限定すると、前段の例のように午前の半日(3時間)と午後の半日(5時間)では、年休として休ませる時間が極端に短くなることもありえます。
また、「遅刻したときのために(午前休を)充当させよう」といった目的で午前休のみを設けることは、年休の本来の目的から逸脱しているので問題があるでしょう。
以上をまとめると、半日単位年休を午前のみに限定することも可能ですが、できれば午前半休・午後半休ともに認めたほうが望ましいといえます。
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年休のそもそもの目的は社員をリフレッシュさせて、改めて仕事に向き合うエネルギーをチャージさせることにあります。
働き詰めでいると良いアイデアに恵まれにくく、ミスの頻発など逆に仕事が滞ることもあるからです。
制度の運用を検討するときに、合理性に重きを置きすぎると、ともすれば本来の目的を忘れがちになりますからぜひとも気をつけたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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