「契約社員を新しく採用するとき、“契約更新による有期雇用期間の限度は最長5年間まで”とするのは、法律的にダメなのかな?」
正社員を解雇するのは法律的に厳しく規制されるので、景気変動に対応できるよう、企業は有期で人材を雇用します。
かつては、有期労働契約を更新するときに法律上の制限は何らなく、会社と働き手の当事者間にゆだねられていました。ですが、今は法律によって5年を超える有期労働契約の更新について、働き手に無期転換申込権が発生します。
そのため「無期雇用転換によって雇用調整できなくなるのでは?」と冒頭のように不安に思われるケースもあるようです。
そこで、今回は5年を超える契約更新はしないとすることは有効なのか、そして注意するべき点について詳しく確認していきたいと思います
無期転換申込制度ってどんなもの?
無期転換申込制度とは、5年を超えて有期労働契約を継続更新した場合には、その働き手の申し込みよって、雇用期間の定めのない労働契約に移行するものです。つまり、有期労働契約が会社との間に継続して、通算した期間が5年を超えた6年目に無期転換申込権が発生します。
この権利は、働き手の申し込みがあれば会社側はこれを承諾したものとみなされます。つまり、その働き手側の一方的な意思表示のみによって成立します。
とはいえ、無期転換申込権を取得しても、無期転換を必ず申し込まないといけない、というわけではありません。
申し込むかどうか、いつ申し込むかは本人の自由です(申込権は6年目の有期契約期間中であればいつもで行使でき、その有期労働契約期間中に行使しないと当然に権利は消滅します)。今の時代は働く人の意識が多様化しているので、本人の意思を尊重するためです。
これまで企業としては、不況で生産量が減少したときなども期間満了という方法によって、雇用量の調整を図ることで景気変動に対応してきました。それでは、「5年を超えては更新しない」という制度化を図ることは、働き手の無期転換申込権の発生を阻害するものとみられてしまうのでしょうか。
むやみに期待させる会社側の言動はNG
結論からお伝えすると、契約当初から無期転換申込権が発生することを回避するために、「契約更新による有期雇用期間の限度は最長5年間」「1年契約の更新回数は最高4回まで」などと、5年を限度として更新期間を限定する定めは、当事者間の自由意思による合意であれば有効となります。
そしてここで注意が必要なのは、更新限度期間を設けた場合には会社は働き手に対して、「ひょっとすると次の更新があるかも」というような、最長更新の限度期間を超える期待を持たす言動をしてはいけない、ということです。
5年の更新限度を超えて、さらなる更新の可能性を期待させるような言動を、会社側が行っている場合には、たとえ「5年限度」と定めていても、その言動によってその効力はなくなり、「5年更新限度制」が崩れて無効となってしまう可能性があるからです。
もし、通算5年の更新限度を超えて契約する必要性が生じた場合には、「正社員登用制度」や「準社員制度」といった社内制度を別途設けるのはひとつの方法です。つまり、あくまでも「5年限度制」は壊さないで、別途の無期転換用の登用制度を定め、きちんと区別して対応することがポイントとなります。
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会社としては、「せっかく無期雇用になるのだったら、もっと力を発揮してもらいたい」と契約社員時代よりも仕事内容などを拡大したいと考えられるかもしれません。
その点について、通達では「職務内容等が同一であるにもかかわらず、従前より過重な労働条件を課することは望ましくない」としています。
そこで、無期転換権が発生するより早い時期に(たとえば勤続4年目などで)、正社員登用にチャレンジできるようにしておくのも方法のひとつです。
(無期転換して)従来の労働条件のまま長く勤めるのか、ある程度責任のある仕事につく正社員をめざすのか、目の前に選択肢があるというのは、働き手のモチベーションアップにつながると思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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