1年間の有期契約で最初の3か月を試用期間にできますか

新聞の上に置かれたピンクのバラの花と生クリームたっぷりのウインナーコーヒーのカップ&ソーサ。

うちには1年契約の契約社員がいるけれど、最初の3か月間を試用期間にしても法律的に問題ないのかな? (営業課長談)

 

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勤務態度の悪い人は3か月で契約解除にしたいが、優秀な人に3か月で辞められるのは困るので、上司として試用期間の設定を悩んでいます。

 

試用期間中の労働契約は、一般的には「解約権留保付の本採用契約※」と考えられています。採用時の面接だけでは企業側のチェックが難しいからです。(※社員として不適格とジャッジしたときは解約できる権利が留保されている労働契約)

 

とはいえ、法律でいろいろな制約が課されているので解雇は簡単にはできません

 

そこで今回は、1年契約の契約社員(1年間の有期雇用契約)で最初の3か月間を試用期間にできるのか、詳しく確認していきたいと思います。

試用期間後の本採用拒否とは

公園のベンチのわきでスマートフォンをチェックするビジネスバッグを抱えた営業社員。

採用するかどうかを決める段階では、その人の資質、性格、スキルその他会社の社員としてふさわしいかどうかを、適切に判断することはできません。

 

そのため、試用期間といういわばテスト期間を設けて、その間に実際の働きぶりや言動をチェックして、最終的に社員として雇用するのかを決定することになります。

 

この期間中に「社員としてふさわしくない」と、不適格性が認められたため本採用しない場合には、その旨の意思表示を会社から行うわけですが、本採用拒否は「解雇」にあたるので、一般的な解雇の有効要件を充たす必要があります

 

本採用拒否は、本採用後の社員を解雇する場合よりも、広い範囲の解雇事由が認められていますが、解約権の趣旨・目的に照らし合わせて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当として認められる場合にだけ許されることになります。

実務的にどうなる?

3つ並んだ革製のビジネスバッグ。

では本題の、「1年間の有期契約で最初の3か月を試用期間にできるのか?」についてです。

 

1年間の有期雇用契約において、その契約内容を1年間にわたって均質なものにしなければいけないというわけではありません。よって、最初の3か月間を試用期間として位置づけることは、不相当に長い期間ではないので認められるでしょう。

 

ただし、「勤務態度がよくない人は3か月で契約解除にしたい」といっても、前段でお伝えしたように、本採用拒否は「解雇」にあたるので、一般的な解雇の有効要件を充たす必要があることを忘れてはいけません

 

試用期間中の振る舞いから、採用決定時には知り得なかった事実を知ることになり、「引き続き雇うのは適当でない」との判断に至ったとき、解約権の趣旨や目的からして、客観的にも相当であると考えられる場合には、留保した解約権を行使することができる(本採用拒否ができる)、ということです。

 

次に「優秀な人が3か月で辞められるのは阻止したい」というのは、実は、社員側からの契約解除の問題です。社員側からの契約解除について、有期雇用契約の場合は、やむを得ない事由がある場合でなければ、社員は契約を解除できないことになっています。よって、社員が入社後3か月してから退職を申し出たとしても、企業としてはやむを得ない事由がなければ認められない、としても差し支えありません。

 

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本文でもお伝えしたように、「試用期間中であれば簡単に本採用拒否できる」という考え方でいるのは適切ではありません。

 

なお、試用期間中の解雇であっても、入社後14日を経過した場合には、30日前に解雇を予告するか、30日分の平均賃金を解雇予告手当として支払う義務が会社にありますから、注意が必要です。

ガラスの花瓶に生けられたミモザの花とピンク色のガーベラの花。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。花びんに活けられた真っ赤なバラ。白の置時計。
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。談笑するビジネススーツ姿の男女。

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