賞与の算定期間の一部と産前産後休暇の期間がカブっている社員がいる。賞与の計算はどうすればいいんだろう?(?_?)(給与計算担当談)
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会社には、女性社員の結婚、妊娠、出産、育児と仕事の両立について企業に課せられた責任を理解し、労働働環境を整えることが求められています。
時代とともに変化する働き方に対応するとは、常に新しい課題と向き合うことの連続だといえます。
産前産後休暇は会社に対して「有給にしなさい」と義務付けられていないので、「賞与はどうなるの?」との疑問が浮かびます。
そこで今回は、産前産後休暇の取扱いとともに、その期間中の賞与の計算をどうするといいのか、詳しく確認していきたいと思います。
産前産後休暇の取扱い
労基法では、母性保護のため産前産後の休業期間を定めています。
そのため、会社は6週間以内に出産する予定の女性社員が休業を請求した場合には、働かせてはいけません。また、産後8週間を経過しない人を働かせてはダメです。
この産前6週間、産後8週間の休業を産前産後休暇といいます。この「出産」とは、妊娠4か月以上(1か月は28日と計算。妊娠4か月以上とは、妊娠85日以上のこと。)をいい、生産だけではなく死産を含みます。
産前6週間の期間は、自然の出産予定日を基準として計算し、産後8週間は現実の出産日を基準として計算します。出産予定日の当日は産前6週間に含まれることになります。
もし、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に予定された出産予定日よりも遅れて出産した場合、予定日から出産当日までの期間は、産前の休業期間に含まれます。(「多胎妊娠」とは双子以上の妊娠をいいます。)
それだけ産前休業が延長するので、産後休業の期間は変わりません。
賞与の支給をどう考える?
産前産後休暇中の給与ついては、労基法で有給とも無給とも規定されていないため、「有給にしなければならない」とは、会社に義務付けられていません(健康保険より出産一時金と出産手当金が支給されます)。
そのため無給の休暇が続くと、女性社員の生活に影響を与えるので、労基法では「産後6週間を経過した女性が請求した場合、医師が差し支えないと認めた業務に限り、就業可能」としています。
では、賞与の支給についてはどう考えるといいでしょうか。
たとえば、“産前産後休暇を欠勤日数に含めて、算定した出勤率が90%未満の場合には一切賞与を支給しない”というような扱いは無効として解釈されています。
ただし、前述のように労基法では産前産後休暇を定めてはいますが、この期間中の賃金については何ら定めていないので、産前産後休暇が有給であることを保障したものではないことがわかります。
そのため、賞与の算定にあたって、単に働いていなかった産前産後休暇の期間や、時短勤務の措置による短縮時間分に対応する賞与の減額にとどまるものであれば、直ちに公序に反して無効とはいえない、とされています。
言い換えると、いわゆるノーワーク・ノーペイの原則にとどまる限り適法だということです。
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法律的な解釈としては、以上のようになりますが、社員が実際に復職する時には「あなたの復職を歓迎している」ことと「これからのあなたの仕事に期待していている」ことの両方をしっかり伝えたいですね。
仕事へのやりがい、働きがいは周囲から必要とされることで高まるからです。
本人としては、休んでいたことで「申し訳ないな・・・」などと、周囲に引け目や遠慮を感じていることもあるので、(プレッシャーにならない程度に)声掛けをすることで、本人の不安解消につなげていきましょう。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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