「社員が習い事をしている時間は労働時間にカウントされますか?」
社内で茶道や華道、書道の「部活」があり、社外から講師を招いて活動を行っていて、「部活動」の時間が労働時間にカウントされるのか、されるのなら残業代を支払う必要があるのか?とのことでした。
また、仕事に役立てようと終業時刻後に英会話スクールに通う社員さんから、残業代の対象にならないのか?との質問もあったそうです。
社員の前向きな姿勢に水を差すことのないよう、法律面のことをクリアにしておきたいとお考えで、このような悩みをお持ちの経営者、人事担当者の方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、社内・社外における「習い事」が労働時間にあたるのかどうかについて、詳しく確認していきたいと思います。
社内における「部活動」の習い事はどうなる?
労働時間とは、仕事のため会社による指揮命令下にある時間のことをいいます。
たとえば新入社員を対象に、接客態度やビジネスマナーの向上を目的として、終業時刻を回ってから茶道、華道、書道などの教育を業務命令として行う場合は、もちろん労働時間としてカウントされます。
とはいえ、そのような目的があるにしても、メインの目的は「文化に対する教養を高める活動の一環」とする場合には、会社の福利厚生制度のひとつとして考えられます。
いわば会社による社員へのサービス提供にあたりますから、労働時間にはカウントされません。
つまり、会社としては社員の利用できる制度として、茶道、華道、書道などの講師を依頼し、社内にそれらの講習会を設けたのであって、それを利用するかどうかは社員本人の自由意思にかかっているため、その時間は「会社の指揮命令下にある時間」とはいえないからです。
社外における習い事はどうなる?
社外における英会話スクール、Web・ITスクール、簿記専門学校などに通って勉強する時間は、「そこに通って受講しなさい」と会社から(明示もしくは黙示の)命令がない限り、労働時間にはカウントされません。
会社からの命令があれば、いわゆる出張時間と同じように会社の指揮命令下におかれる業務の遂行となります(労働時間にカウントされる)。
たとえその講座を受けることが社員の職務内容そのもの、もしくは密接な関連のあるものであっても、会社から拘束を受けないのであれば自由時間といえるので、労働時間には該当しません。
それはあくまでもプライベートの自由時間における「ジブン磨き」なのであって、社員は会社の支配下にないからです。
言い換えると、会社に労務を提供していない、と言えます。
よって、終業後に会社を出てから、このようなビジネススクールに通う場合、労働時間にも該当しないし、業務上災害の対象になりません。
ただし、その「逸脱または中断の間」(ビジネススクールに通い、講座を受けている間)を除き、もとの通常の通勤経路に戻ったときは通勤に該当します(通勤災害の対象となります)。
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定時で仕事を終わらせて、プライベートな時間で自分なりに一歩先の新しい知識やスキルをマスターすることは、これからますます重要になってくるでしょう。変化がめまぐるしい時代にひとつの知識やスキルでは対応しきれないからです。
とはいえ、仕事に関連するスキルアップであるがゆえに、「残業代の対象になるのでは?(不満)」といった思いを抱く社員さんも多いようです。
人は誤った思い込みにはまると、なかなか抜け出せないものですから(モチベーション低下の原因になります)、そのあたりをきちんと説明できるようにしておきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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