社員の年休取得率が思っていたより進まない( ;∀;)年休を取得しやすくするために時間単位年休を導入してみようか。注意点はあるのかな?
(素材メーカー勤務 人事担当者談)
**
結論からお伝えすると、時間単位年休の導入にあたって、まず押さえておくべきはその導入要件についてです。
これを踏まえないで、たとえ会社が「これからは時間単位年休を取ってもいいですよ」と社員に認めたとしても、そもそも導入の根拠がないので、法律的には年次有給休暇の取得として扱われないからです。
そこで今回は、時間単位年休を職場へ導入する際にはずすとマズイ、導入要件とはいったい何なのか、詳しく確認していきたいと思います。
導入時に忘れてはいけない要件とは
はじめに、時間単位年休を導入する際に忘れてはいけない要件とは、「労使協定を結ぶこと」です。この労使協定をどのくらいの規模で結ばないといけないかというと、36協定と同じく、事業所単位となります。企業全体で結ぶものではありません。
協定の締結後は、所轄の労基署に届け出る必要はなく、各事業所において所定の周知方法をとって、備え付けておけばOKです。
この労使協定によって、対象となる職場において社員が「時間単位年休を取得します」と申し出た場合には、会社は(社員の請求した時季に)時間単位で年次有給休暇を与えることができるようになります。
ここでポイントとなるのは、それぞれの社員に対して「必ず時間単位で年休を取得しなければならない」と、時間単位による取得を義務付けるものではない、という点です。あくまでも、社員が時間単位で年休を取得するのか、日単位で取得するのかは、社員本人の意思によるところとなります。
実務上で注意すべきこと
繰り返しになりますが、労使協定を結ぶことが職場に時間単位年休を導入する要件です。では、労使協定がない場合に時間単位年休を取得したらどうなるのでしょうか。
この場合、たとえ会社側が時間単位年休の取得を認めていたとしても、労使協定がない(そもそもの導入の要件を満たしておらず根拠がない)ので、法的な年次有給休暇の取得として扱われません。
つまり、(時間単位年休を取得していたとしても)法定の年次有給休暇の日数の残数は変わらないということになります。
たとえば、年度の途中で職場における年次有給休暇の取得率が思わしくなく、会社に義務付けられている「(年1日以上の年次有給休暇が付与される社員に対して)年5日の年休を取得させること」が果たせないような状況だったとします。そこで、何とか取得しやすくなるように、労使協定を締結せずに慌てて時間単位年休を導入しても、目的とする年休消化にはつながらないという事態となってしまいます。
まとめると、労使協定がない時間分割の年休は認められず、あくまで日単位が原則となります。もし、労使協定を結ばずに時間単位年休を実施するのであれば、その会社で独自に定めた(法定を超える)会社年休を対象とするほかはありません。
なお、労使協定の締結によって時間単位年休を実施する場合には、時間単位年休に関する事項を就業規則に記載する必要がありますので、こちらもどうぞお忘れなく^^
**
労使協定で定める事項は、下記のとおりとなります。
- 時間単位年休の対象となる社員の範囲
- 時間単位で取得できる年休の日数(5日以内であること)
- 時間単位年休の1日あたりの時間数(1日分の年休が何時間分の時間単位年休に相当するのか)
- 1時間単位以外を単位とする場合の時間数(2時間や3時間のように1時間以外の時間を単位とする場合、その時間数を定める)
新型コロナウィルスの影響をきっかけに、職場での働き方について柔軟なスタイルを検討していかなければならない時代となりました。
年次有給休暇についても、もちろん例外ではありません。
仕事内容、勤務形態などをも充分に考慮して、その職場にマッチしたあり方を考えていきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事