ウィズコロナで分散勤務を実現させる3つの方法

木製のデスクに広げられた洋書。傍らに無造作に置かれた芍薬の花。飲みかけのコーヒーが入った白のマグカップ。

新型コロナウィルスの感染拡大から、今は出勤率の削減や職場での社員同士の接触を減らすなどの対策が企業の課題になっています。

 

とはいえ、パソコンの配備、個人情報の取扱いなど、テレワークの実施にハードルの高い職種もあるでしょう。テレワークが通常モードの職種でも、仕事の都合で出社しなければならないときもあると思います。

 

そんなとき会社として心配なのは、混雑した電車等での通勤によって社員に負担がかかることです。

 

できるかぎりの感染症の予防対策を行いながら、社員の負担を軽減し、仕事を続けていくには、今までは“当たり前”とされてきた勤務体制を状況に応じて見直し、選択肢を増やすことがポイントになってきます。

 

そこで今回は、ウィズコロナ時代に分散勤務を実現させる3つの方法についてご紹介したいと思います。

方法① 周辺企業と働く時間帯をずらす

横断歩道を渡るトートバッグを手にしたビジネスカジュアルの装いの男性。朝の通勤。

通勤ラッシュは、朝の7時半くらいから9時にピークを迎えるのが通常です。8時半から9時に始まる企業が多いためです。

 

電車が混雑する時間帯を避けて通勤するには、「周辺企業と(自社の社員が)働く時間帯をずらす」という発想がカギになります。

 

この措置は、いわゆる「労働時間の繰上げ・繰下げ」であり、変形労働時間制やフレックスタイム制にはあたりません。労基法では、会社の直接的な指揮命令のもとで実際に働いた時間を労働時間としてカウントするため、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げは会社の自由です。

 

ただし、社員が会社の繰上げ・繰下げ命令に従う義務を発生させるには、就業規則に労働時間の繰上げ・繰下げについて規定しておく必要があります

 

就業規則には、どんな場合に実施されるのか、その事由を書いておくといいですね。

「生活のリズムやプライベートの予定を狂わされるのでは?」との不安を社員に抱かせないよう、「感染症の予防対策をとりながら、仕事を滞らせないための措置」であることを理解してもらうことが大切です。

方法② 始業・終業時刻を社員が選べる

オフィスのデスクのノートパソコン。傍らにガラスの花びんに活けられた紫色の花。コーヒーサーバーからマグカップにコーヒーを注ぐ。

通勤ラッシュの混雑状況は、路線によって異なるため、社員自身で毎日の出社や退社の時刻を自由に決めてもらうほうが良い場合もありえます。会社への出社・退社時刻を社員の自己選択にするには、「1日単位のフレックスタイム制」という方法があります

 

1日単位のフレックスタイム制とは、就業規則に始業・終業時刻を定めておきますが、社員が自主的にその始業・終業時刻を繰り上げ、または繰り下げて自動的に始業・終業時刻を変更する制度のことをいいます。

 

法律上のフレックスタイム制(社員が一定期間のなかで決められた一定時間数働くことを条件として、1日の勤務を自由に開始し、終了できる制度)ではありません

次の4点についてあらかじめ検討しておくことが、運用をスムーズにするコツとなります。

  1. 始業・終業時刻を定めておく
  2. 就業規則に始業・終業時刻の自己選択による繰り上げ・繰り下げ制を定める
  3. 実労働時間が所定労働時間を超えた場合は残業代を支払う
  4. 上司への届出・承認制にするかどうか(法律上のフレックスタイム制ではないので、届出・承認制にしてもOK)

方法③ 始業・終業時刻を社員が自由に決める

オフィスでノートパソコンを手に持ち操作するブラウスにパンツ姿の女性。

住んでいる地域、家族構成、学校の事情、本人や家族の健康状態などによって、生活パターンはいろいろです。そこで、通勤電車での密を避けて、生活リズムを崩さずに社員が出勤できる方法として、「フレックスタイム制」があります

 

フレックスタイム制とは、一定期間について総労働時間(所定労働時間)を定め、その期間中の各日において、社員が自由に自分の意思で始業・終業時刻を選択して勤務するものです。

社員自身で毎日の労働時間の長さ、どの時間帯に働くかを自由に決めて、一定期間における総労働時間の範囲内で、毎日の仕事内容や仕事量に応じて労働時間を調整することになります。

 

時間指定の商談や会議への出席が必要なときには、コアタイムをあてることで対応できます。コアタイムを設定する労使協定でコアタイムの繰り上げ、繰り下げを定め、制度として運用することになります。

フレックスタイム制では、働く時間帯の自由選択が許されているがゆえに、緊急の応対や重要な業務が発生したときには、しっかり対応できるよう、社員にセルフマネジメント力が求められるといえます。

 

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以上の分散勤務を実現させる3つの方法は、①→②→③の順に働き方の柔軟度が高まります。ただ、これらの方法は、ここ最近にできたものではありません。

 

つまり、実は昔からある方法の中にも、今を乗り切る知恵があるということです。

状況を変えるためには、「何か目新しいものでなくては」と思いがちですが、普遍性といまの会社の状況や方針を掛け合わせることで、打開策が生まれます。

 

コロナ禍にあっても、社員のモチベーションを下げることなく、それぞれの持ち味をのびのびと活かせる職場づくりのヒントになればと思います。

トレイにのったコーヒーのカップとマカロン。カーネーションの花たち。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。花びんに活けられた真っ赤なバラ。白の置時計。
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。談笑するビジネススーツ姿の男女。

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