「また、タイムカードを押してない人がいる(怒)。面倒だけど注意して、出勤時間を確認しないと。あーあ、なんでこんなことしなきゃいけないんだろう・・」(メーカー勤務・人事担当26歳談)
実際に社員がその日に働いているのなら、会社には労働時間を把握してタイムマネジメントを行う義務が課せられています。
言い換えると、「タイムレコーダーの打ち忘れは本人のミス」という理由で、欠勤扱い(労働時間はゼロカウント)にすることはできません。
人事担当者にしては「モヤッ」とすることがあるかもしれませんし、社員にしても「タイムカードはめんどくさい」との思いがあるかもしれないのに、なんでそこまで・・・(一一")
そこで今回は、なぜ会社は社員の労働時間を把握しなければダメなのか、またその根拠はどんなところにあるのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
労働時間の把握義務とは
労基法では、労働時間、休日、休暇などについて、働く人を守るためにいろいろな規制をしています。
そして、それを遵守する義務は主に会社に対して課せられています。特に労働時間にまつわる規定にかぎっていえば、会社のみがその遵守について法律上の責任を負っています。
たとえば、「会社は社員に休憩時間を除いて1週間について40時間を超えて働かせてはダメ」「会社は1週間の各日において1日につき8時間を超えて働かせてはダメ」ということが、労基法で規定されていますが、もし会社がこれに違反すると、会社に罰則が与えられることになります。
そこで、会社がこのような法律の規定に違反する行為を犯さないようにするには、常に労働時間を把握して、社員にいま何時間働かせているのか、法律上で許容されるタイムリミットまであと何時間なのかを知っておく必要があります。
仮に社員のほうが「わたしはすでに1日の労働時間の制限をオーバーして働いている・・・」と認識していたとしても、会社の命令のもとそのまま働き続ける可能性は高いでしょう。そういった危険性からしても、会社の労働時間をきちんと把握して、しっかりカウントしなければならないという義務は、とても重要な役割を果たしているといえます。
法律的な根拠はどうなる?
厚生労働省の定めた「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」の冒頭においても、「労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有していることは明らか」と示されています。
このような労働時間の把握義務は、法律上の根拠としては労基法108条で定められています。ここでは、直接的には会社が賃金台帳を調整する義務について規定されています。
つまり、賃金台帳を事業場ごとに調整し、賃金の支払いの都度遅滞なく、社員の各人ごとに、次の事項を記入しなければならないことになっています。
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働時間数
- 休日労働時間数
- 深夜労働時間数
- その他
これらの事項を賃金台帳に記入する義務を果たすには、社員の働いた時間をきちんと把握しておかなければ、記入しようにも記入できません。
すなわち、会社には労働時間の把握義務をも課せられているということがわかります。
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会社の労働時間制度は社員にとって、1日におけるプライベート・仕事・生活の割合を決めるものです(会社での拘束時間が長ければ、プライベートはその分少なくなる)。
そのため、労働時間制度は生活と仕事の両立のしやすさを決めるものでもあります。
折しも新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐため、職場での働き方も柔軟に対応していかざるをえない状況です。社員の働きやすさを考えて労働時間制度の柔軟化を図るにしても、まず平常の労働時間を把握しておく必要があります。
働きやすさは社員のストレス軽減やモチベーションにつながるので、労働時間の把握を「義務だから」だけでなく、前向きなアクションとしてとらえたいですね。
■参考記事
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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