「突然の納期変更や機械トラブルがあったとき、計画年休日が目前にあると対応できない。そんなとき計画年休日を変更できるの?」
年休の「計画的付与」とは、社員が私的な理由で自由に取得できるよう一定の日数を留保しながら、これを超える日数については、会社と社員の間での労使協定によって計画的付与を認めることとしたものです。
年休取得率をアップさせるための制度とはいえ、業務上の突発的な出来事と計画年休日が重なってしまうような事態を考えると、とても悩ましいですよね。
そこで今回は、会社が計画年休日を変更することは認められるのか、詳しく確認していきたいと思います。
計画年休日の変更は労使協定による
職場に年次有給休暇の計画的付与制度を導入するには、労使協定の締結が必要です。その労使協定によって、職場全員による一斉休暇日や個人別の休暇日などを定めることになります。
あらかじめ協定に定めた計画年休日に、仕事の都合上どうしても社員に働いてもらう必要性が生じたとき、会社は時季変更権を行使して、計画年休日を他の日に変更できるのかどうかが問題です。
この点について、次のような内容が通達で示されています。
- (年休の)計画的付与の場合、社員の時季指定権(社員が年休を取得したい時季を指定する権利)および会社の時季変更権はともに行使できない
とはいえ、業務上の急な事態です。そこで、計画的付与制度を導入する際の労使協定のなかで、計画年休日の変更について定めることは差し支えありません。つまり、労使協定にあらかじめ定めておくことによって、計画年休日を変更することは有効だと考えられています。
また、上記の通達内容では社員の時季変更権も行使できないことになっていますから、社員側の時季変更の申出要件についても、労使協定に規定しておく必要があるでしょう。たとえば、下記のような内容を労使協定に盛り込むことになります。
- 会社と社員は、計画年休日として確定している場合であっても、やむを得ない事情により計画年休日の変更を希望するときは〇〇日前までに申し出ることができる。
- 会社と社員は、業務の正常な運営を妨げる、または社員の予定を著しく妨げる事由のない限り、この変更の申出に応じること。
労使協定の内容はどうなる?
前段でお伝えしたように、計画年休の付与方法などは労使協定によって、その内容を定めることになっています。
年休の計画的付与の方式としては大きく分けて、①職場全体の休業による一斉付与、②グループ別付与、③計画表による個人別付与、の3つが考えられます。
それぞれの場合において労使協定で定めるべき事項が、通達で次のように示されています。
- 職場全体の休業による一斉付与の場合は、具体的な年休の付与日
- グループ別付与の場合は、グループ別の具体的な年休の付与日
- 計画表による個人別付与の場合は、計画表を作成する時期、手続き
病人の介護、社会人大学院などへのスクーリングなど、特別な目的のために年休を使う必要があり、自由に取得できる年休日数を多く設定することに合理的な理由がある社員については、本人の希望の有無にかかわらず、強制的に年休を付与することは適切ではありません。
そこで、労使協定の内容を定めるにあたって、年休の計画的付与の対象から除外するなどの配慮が必要となります。
なお、計画年休も法定の年次有給休暇の一部ですから、就業規則の絶対的必要記載事項(就業規則へ絶対に記載しなければならない事項)である「休暇」に該当します。よって、労使協定だけではなく、就業規則に記載しなければなりませんので、どうぞお忘れなく!
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最近は年休の計画的付与を活用して、長期の連続休暇を導入する企業もみられます。その背景には、社員の希望だけなく、経営上のメリットや目的があるようです。
たとえば、次のようなものが挙げられるでしょう。
- リフレッシュの機会を設けるため(仕事にずっと追われていると発想力が鈍化する)
- 仕事を離れて、一消費者としての視点を磨くため
- 普段と違う体験をすることで、新しいアイデアや創造力を養うため
- 上司が連続休暇をとることで、部下を独り立ちさせる育成の機会にするため
- 連続休暇の取得に向けて、職場内で仕事の配分や分担の調整が行われるため
まとめると、仕事の効率化、コミュニケーションの活性化、部下の育成といった効用が期待できます。業種や職種、規模によって、ハードルの高さは変わると思いますが、連続休暇についていちど検討してみるのもアリではないでしょうか。
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■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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