「パート社員用の就業規則は、パート社員の代表に意見を聴取するだけでいいですよね?正社員には聴かなくてもいいですよね?」
就業規則を作成・変更する権限と義務は会社側にありますが、社員の過半数で組織する労働組合もしくは社員の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないことが、労基法によって定められています。
そのプロセスで就業規則を社員に周知するとともに、就業規則の内容を合理的なものにしようとするのが目的です。
いまの時代では、さまざまな雇用形態の社員がいっしょに働くのはごく当たり前のことです。労働契約の内容の多様化に対応するため、就業規則を雇用形態別に作成することもあるでしょう。
そこで今回は、パート社員の就業規則はパート社員の意見を聴くだけでいいのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
パート社員の就業規則をめぐって
パート社員も含めて常時10人以上の社員が働いている場合、会社には就業規則の作成・届出の義務が発生します。
また、すでに正社員用の就業規則を作成し、届け出ている会社でも、パート社員を雇用して、そのパート社員には正社員用の就業規則を適用しないのなら、別途「パートタイマー就業規則」を作成して届け出なければ法違反となってしまいます。
なぜなら、常時10人以上の社員が働く会社でありながら、「適用される就業規則がない社員」がいることは、その社員について就業規則が作成されていないことになってしまうからです。
そのため、いわゆる「パートタイム労働法」では、正社員とは別にパート社員用の独自の就業規則を作成することを指導しています。
そこで、パート社員用の就業規則を作成して届け出るにあたって、「正社員を含めた全体の過半数を代表する社員よりも、パート社員の代表者の意見を聴くほうがむしろいいのではないか?」との疑問が浮かんできます。たしかに、一見もっともなようにも思えます。
パート社員の意見聴取だけでいいのか?
もちろん、パート社員用の就業規則の作成・変更についても、所轄労基署長に宛てて届け出る必要があります。
その届出にあたっては、職場の社員の過半数が加入する労働組合がある場合にはその組合、それがない場合には社員の過半数を代表する者の意見を聴いて、その意見書を添付する必要のあることが、労基法によって定められています。
したがって、パート社員用の就業規則だからといってパート社員のみ、契約社員用の就業規則だから契約社員のみ、正社員用の就業規則だから正社員のみの、それぞれの過半数代表者の意見聴取だけではダメだということです。
たとえパート社員だけに適用される「パートタイマー就業規則」であっても、契約社員だけに適用される「契約社員就業規則」であったとしても、全体の就業規則を構成する一部にすぎないからです。
そこで、意見を聴くべき社員とは、労基法の定めるとおり「その職場における社員の過半数の代表者」として、職場全体の社員から選出された過半数代表者ということになります。
なお、就業規則の作成・届出にあたって、労基法上では法定要件とはされていませんが、「パートタイマーの代表者の意見を行くように努めること」としてパート労働法では示されています。
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いまやパート社員の活用はめざましく、業務内容も補助的なものから主戦力へと変わってきています。そこで、パート社員の戦力化を図る方法のひとつとして、パート社員について複数の働き方を用意する、というのがあります。
「複数の働き方」として、同じパート社員をどのように区分しているのかというと、たとえば次のような分け方が考えられます。
- 1日の勤務時間や週の勤務日数
- 社会保険や雇用保険の適用の有無
- 希望年収の有無(パート社員の多くは既婚女性のため就業調整を図るケースが想定される)
- 業務内容や職種
もちろん、上記1)~4)の組み合わせも考えられるでしょう。
そのため、労働条件が正社員と異なるパート社員について、その雇用形態の違いに応じて、その違いを定める労働条件を規定したパートタイマー就業規則が必要となってきます。当のパート社員だけでなく、周りの正社員やマネジメントする側にとっても、働き方の違いが明らかになってわかりやすいでしょう。無用なトラブルを防止し、パート社員のやる気を引き出すためにも、きちんと整備しておきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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