「残業代を計算するときに、〇〇手当や××手当も含めないといけないですか?」
割増賃金、いわゆる残業代の計算で問題となるのは、(割増賃金計算の)基礎に算入される賃金と除外される賃金です。というのも、残業代の単価が変わってくるからです。
労基法では、割増賃金の基礎から除外される賃金の種類が限定されている(限定列挙)ので、それ以外の賃金は必ず計算に含めなければなりません。
除外される賃金は7種類ありますが、その中でも特に「住宅手当」の取扱いに注意が必要でしょう(誤解されているケースが多くあります)。
そこで今回は、割増賃金の基礎賃金には具体的にはどういった賃金が算入されて、どういった賃金が除外されるのか、詳しく確認していきたいと思います。
残業代の計算に含めるべき賃金とは
いわゆる残業代の計算に含めるべき賃金とは、具体的にはどんなものでしょうか。この点について労基法では、「これらの賃金だけは割増賃金(残業代)の基礎に算入しなくていいですよ」と、除外される賃金を限定列挙しています。
つまり、次の7種の賃金のみが除外される賃金であり、ここに列挙したもの以外は全部、残業代の計算に含めなければなりません。
たとえ「残業代の計算に含めないことに社員の同意をもらっている」としても、会社と社員の間で自由に決定できるものではありません。
【残業代の計算から除外される賃金】※限定列挙(これ以外は計算に含める)
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当(平成11.10.1より)
- 臨時の賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
※子女教育手当は、特定の層の子どもについての支援を重点的に行うために支給するものです(大学生の子どもへの支援を充実させるため、など)。
※臨時の賃金は、臨時で偶発的な事由にもとづいて支払われるものをいいます。
押さえておきたい注意点
前段でお伝えした「残業代の計算から除外される賃金」ですが、みなさんからお話を伺っていると意外な落とし穴であるようです。「手当の名称にとらわれて算入していなかった」ということもありますから、注意点をみていきましょう。
「残業代の計算から除外される賃金」としての家族手当は、扶養家族の数をもとにして支給されるものをいいます。
たとえ家族手当という名称で支給されていても、扶養家族の数に関係なく一律に支給されるものや、一家を扶養する者に対して基本給に応じて支払われる手当は、これにあたりません(残業代の計算に含めなければなりません)。
「残業代の計算から除外される賃金」としての通勤手当は、通勤距離または通勤に必要な実費に応じて支給されるものです。
たとえ通勤手当という名称で支給されていても、実際の距離にかかわらず一律に支給されるものは、これにあたりません(残業代の計算に含めなければなりません)。
「残業代の計算から除外される賃金」としての住宅手当の具体的な範囲については、次のような内容が通達で示されています。
- 残業代の計算から除外される「住宅手当」とは、居住に必要な費用に応じて算定されるものをいう。手当の名称にとらわれず実質によって取り扱うこと。
- 賃貸住宅では賃借のために必要な費用、持家については住宅の購入や管理などのために必要な費用のこと(費用に定率を乗じた支給額とすることや、費用を段階的に区分して費用が増えるにしたがって支給額を多くするのはOK)。
- 住宅に必要な費用にかかわらず一律に定額で支給されるものは該当しない。
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冒頭で「住宅手当の取扱いに注意」とお伝えしたのは、「住宅手当を世帯主に一律〇〇円支給」といった例が、実はよく見受けられるからです。
みなさんの会社ではいかがでしょうか。
なお、手当の統廃合を行うときに、「残業代の計算から除外される賃金」を廃止して、基本給に組み入れたりする場合には、残業代単価(割増賃金単価)が上昇することにも注意しておきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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