「会社に着いてからの制服や作業服への着替え、朝の掃除や整理整頓、仕事が終わってからの片づけは労働時間にカウントされるの?」
実際に作業をしている時間(会社の指揮命令下にある時間)が労働時間にカウントされるのは、誰もが頷けると思います。
ですが、それらに付随する前後の時間について判断に迷うことは多いのではないでしょうか。
「〇〇〇の場合は労働時間にあたらないけれど、×××なら労働時間になる」というような覚え方をしていると非常に煩雑ですし、「じゃあ△△△のときはどうなるの?」と、イレギュラーなケースに対応できませんよね。
そこで今回は、実作業に付帯する作業時間が労働時間になるのはどんなときか、その「判断基準」について詳しく確認していきたいと思います。
付帯時間が労働時間にカウントされる2つの要件
制服や作業服への着替え、仕事前の清掃や整理整頓などの準備、仕事後の後始末・・・などの、実作業に付帯する作業時間が、労働時間にカウントされるには、次の2つの要件をどちらも満たさなければなりません。
- その行為が業務にとって必要不可欠であること
- その行為が会社の指揮命令下にあって、拘束されて強制的に行われていること(社員の自由意思で任意に行われているのではないこと)
実作業に付帯する時間が労働時間としてカウントされるかどうかは、まとめると下記の図式になります。
【会社の指揮命令+必要不可欠性→労働時間】
では、「必要不可欠性」とはどのように考えるとよいのでしょうか。
必要不可欠性の4パターン
実作業に付帯する時間が労働時間としてカウントされるための要件のひとつ、「必要不可欠性」は、次の4パターンに分類されます。
- 法令に基づく「必要不可欠性」
- 作業の性質による「必要不可欠性」
- 社内ルールによる「必要不可欠性」
- 慣習による「必要不可欠性」
では、詳しい内容をそれぞれみていきましょう。
1)法令に基づく「必要不可欠性」
- 法令によって一定の準備や後始末が定められており、これを会社の指揮命令下で行うとき
- たとえば、保護衣、保護具等の装着が義務付けられている場合、作業場の身体の洗浄が労働安全衛生法において義務付けられている場合
2)作業の性質による「必要不可欠性」
- 作業の性質上、必ず一定の準備や後始末を必要とする場合で、これを会社の指揮命令により行うとき
- たとえば、始業時の点検(設備機械など)、用具の整備、作業後の格納や清掃など
3)社内ルールによる「必要不可欠性」
- 2)の場合までとはいえないが、社内の規則や内規などで社員に義務付けられている準備や後始末を行うとき
- たとえばゼロ災運動の訓練、朝礼や終礼が規定化されていて、不参加のときには不利益がある場合など
4)慣習による「必要不可欠性」
- 慣習により義務づけられている、または制度化されていて、かつそれを怠る場合に何らかの不利益が予想される準備や後始末を行うとき
- たとえば、鍵当番としての始業前の開錠、社旗や安全旗の掲揚、当番制による清掃や店舗の整理など
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仕事の準備や後始末は、ともすると「雑用」として片づけられがちかもしれませんが、上記のように労働時間としてカウントしなければならないときもあります。
それにもかかわらず、単なる雑用として一部の社員だけにやらせていたりすると、不満や苦情を抱かせることになりかねません。
社員の定着率、仕事へのやる気を高めるためにも、現場の実情をしっかり把握しておきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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