「Aさんがご家族の介護でフルタイム勤務がキビシイらしい。営業部のエースなのにどうしよう?( ;∀;)」
育児や家族の介護、大学院への通学、通院による治療・・・こういった社員の事情に対応する方法のひとつに短時間勤務制度があります。
短時間社員は、職場の他の社員と比べて所定労働時間が短いですが、年休の発生要件である出勤率をどう考えるのかが問題です。
年休の発生要件には「全労働日の8割以上の出勤」が必要ですが、出勤率の計算で「労働日」がフルタイムの出勤を指すとしたら、短時間社員では難しくなります。
そこで今回は、短時間社員をはじめ労働時間の短い社員の出勤率をどのように計算するかについて詳しく確認していきたいと思います。
出勤率計算における「労働日」とは
年休の発生要件「全労働日の8割出勤」について、分母にあたる「労働日」とは、まるまる1日の出勤のことをいうのでしょうか?
それとも、半日程度であっても1日の出勤として「労働日」に含まれるのでしょうか?
労基法における「労働日」とは、実は、所定労働時間の長短を問いません。たとえ1日の労働時間が1時間であろうと、12時間であろうと(変形労働時間制の場合)、関係ありません。つまるところ労働義務のある日であれば、1労働日としてカウントされるのです。
短時間社員の場合でいうと、この「全労働日」とは所定労働日のこと、つまり労働契約によって働く日と決まった日(労働義務を課せられた日)のことを指します。たとえば、一週間のうち月、水、木、金曜日に働くと契約した場合、その4日が「全労働日」となります。
「全労働日の8割出勤」という出勤率の計算にあたっても、あくまでも「労働日」単位なのであって、「時間単位」ではありません。つまり、1日あたりの労働時間の長短は関係なく、とにかくも1時間でも出勤していれば、その日は「1日出勤した」ということで計算されます。
所定労働時間が4時間の短時間社員は0.5日として計算し、8時間の短時間社員は1日として計算する、ということにはなりません。感覚的に注意が必要といえますね。
1分間でも1日の出勤になる
前段でお伝えしたように、出勤率の計算上では、所定労働時間が4時間の短時間社員も、8時間の短時間社員も同じように「1日」の出勤として扱われます。1日の労働が何時間であっても、会社に出勤したからには出勤日数にカウントされます。
ものすごく極端な例ではありますが、1分間でも会社に出勤した時間があるのなら、その日の出勤率は「1日の出勤」として扱われることになります。さらには、遅刻して出勤しても、途中から早退しても、「1日の出勤」ということになります。
この取扱いは、もちろん労基法が定める「年休の出勤率」についてのみのものです。ですから、それぞれの企業における賞与や昇給、昇格などの査定にまつわる出勤率の計算には関係ありません。たとえば賞与の査定において、遅刻や早退の事案を出勤率の計算にいれても構いません。
まとめると、人事評価としての「出勤率」については、「年休の出勤率」の取扱いに拘束されません。企業の業種、従事する職種などに応じて、それぞれの企業でその取扱いについて決めることになります。
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短い時間で成果を上げることを目指す、仕事の生産性をみる、という方針(そしてそれが実現できる業種や職種である)でいくのなら、「人事評価としての出勤率」も「年休の出勤率」と同じでも支障はないと考えられます。働く時間の長短は問題ではなく、アウトプットの出来がものをいうからです。
一方、働く労働時間数が少ない社員(短時間社員、パート社員、嘱託社員など)と、そうでない他の社員とは、従事する職種や仕事内容、責任などが異なる、ということなら「人事評価としての出勤率」と「年休の出勤率」とは分けて考える必要があるでしょう。
どちらがいい、悪いというのはなく、企業の業種、従事する職種など実態によります。社員に不公平感を感じさせないよう、あらかじめ検討しておきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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