今度入社してもらう中途採用のAさん。管理職としての採用だから、試用期間の適用はどうなるんだろう?そもそも中途採用者は新規学卒者じゃないんだから試用期間はなくてもいいのかな?(人事担当者談)
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平社員での中途入社の場合は試用期間の適用があって、管理職での中途入社なら適用がないのか?と判断に迷ってしまう人事担当者さんです。
というのも、試用期間は「新しく学校を卒業した人の新規採用にまつわる問題」として、通常は考えられているからです。
試用期間は新入社員の教育を行うとともに、向き不向きの判定を行うという2つの機能を備えていますが、新規学卒者ではない中途採用入社の社員の場合はどうなるのでしょうか。
そこで今回は、中途入社の社員にも試用期間の適用があるのかどうか、詳しく確認していきたいと思います。
中途採用入社の社員と試用期間
就業規則において、「会社は、従業員を採用するにあたって、3か月間の試用期間を設ける。この期間中の勤務状況、本人の能力、技術、健康状態、その他職場への適応性等を判断し、当社の従業員として適格であると認めた者を正社員として本採用とする」という旨の規定がある場合には、中途入社の社員であっても就業規則に定める試用期間の適用を受けます。
言い換えると、試用期間付きの労働契約を締結したことになります。ただし、次のような場合は除かれるので、試用期間の適用を受けません。
- 試用期間の適用をしないことを明確に特約として定めた場合
- 最初から正社員として採用した場合
- 最初から管理職として役付で採用した場合
以上をまとめると、特約がなければ、中途入社であっても「社員として採用する」という点においては新規学卒者とかわらないということです。会社の社員として適格があるかどうかを判断する必要性は、どちらも同じだからです。
管理職の中途採用と試用期間
むしろ気をつけなければならないのは、一定の能力や業績に高い期待を寄せて、高い給料で中途採用を行う場合です。
管理職や専門職の場合、一般社員の採用とは異なり、豊富な職務経験や高度な能力、専門性に期待を寄せられ、本人もそのことを十分に自覚したうえで雇用契約を締結することになります(そのため給料をはじめとする労働条件も、相応の優遇を受ける)。
その能力や業務態度等の評価をめぐって、トラブルに発展することは十分考えられます。
そこで、先に中途採用者で試用期間の適用を受けない場合(③)として、「最初から管理職として役付で採用した場合」を上げましたが、最初から役付本採用とせずに、3~6か月程度の「役付見習い期間」として、試用期間的な、「役職就任前に適任かどうかを判断する評価期間」を設けるのもひとつの方法です。
まとめると、中途採用者との認識のすり合わせ(職責や業務内容、アウトプットのレベルなど)のため、また、リスク管理の観点からしても中途採用者への試用期間の適用は必要だといえるでしょう。
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「即戦力」を期待して行う中途採用。けれど行き過ぎた期待はもれなく「期待外れ」という結果になりがちです。
たとえどんなに優秀なスキルを持っていたとしても、その会社に合っていない人にとってみると、ものすごく居心地が悪く、辛い可能性もあります。
会社の仕事内容、社風、環境などが本当に合っているのか、会社と本人のお互いの確認期間として、中途採用者の試用期間を考えたいですね。
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■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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