休暇とは、労働義務のある日に「働かなくていいですよ」と就労義務が免除された日のことです。このような休暇は、「法定休暇」と「会社休暇」の2パターンに区別されます。
法定休暇は、法律で社員に必ず付与しなければならないと決められたもので、年次有給休暇や産前・産後休暇などがあります。
会社休暇は、就業規則などに定められることによってはじめて成立する、その会社オリジナルのものです。たとえば冠婚葬祭のための慶弔休暇や、勤続年数の節目に与えるリフレッシュ休暇などが挙げられます。
この法定休暇と会社休暇は、休暇が発生する要件や法律上の効果がそれぞれ異なっています。
そこで今回は、日常のオフィスで「どう違うの?」と問題になる、法定の年次有給休暇と会社休暇の違いを詳しく確認していきたいと思います。
法定の年休と会社休暇の違い
前述のように休暇は、法律で付与義務が定められている法定の年休と、会社において法定休暇以外に就業規則などの定めに基づいて与える会社休暇(特別休暇との言い方もありますね)との区別があります。
会社休暇は労基法上、特に付与しなければならないものではなく、会社が人材マネジメント上の配慮や慣習などから任意に付与できるものです。
また、就業規則の相対的必要記載事項であり、発生要件を明確にするためにも、次のような点において、法定の年休との取扱いの違いをはっきりさせておく必要があります(言いかえると、日常的に職場で問題となるトピックスでもあります)。
1)自由にいつでも休暇が取得できるか?
- 原則、社員の希望する時期に与えなければならない(法定の年休)
- 請求の時季について制限を設けてもOK(会社休暇)
2)休暇の取得に会社の承認が必要か?
- 社員が希望する日を特定して会社に通告することで年休が成立し、会社の請求を必要としない。ただし、会社には時季変更権がある(法定の年休)
- 会社の承認によって休暇が成立する旨を定めてもOK(会社休暇)
3)休暇取得の目的を示さなければダメか?
- 年休を社員がどのように利用するかは社員の自由。目的を言わなければ付与しないという取扱いはNG(任意なら可)(法定の年休)
- 利用目的の申出を必須としてもOK。目的いかんで付与要件や付与日数を定めてもOK(会社休暇)
4)「〇〇日前までに申し出ること」などの取得ルールを設けてもよいか?
- 取得ルールを守らなければ一切認めないのはNG(当日の申出や事後振替をダメとするのはOK)(法定の年休)
- 取得ルールを守らなければ一切認めない、としてもOK(会社休暇)
5)「忙しいから他の日にして」と取得を拒否していいか?
- 正常な事業運営を妨げるという客観的な理由が必要。単なる繁忙を理由とする会社の一方的な拒否はNG(法定の年休)
- 就業規則にその旨を定めている場合や、合理的な理由がある場合はOK(会社休暇)
6)1日以下の単位に分割できるか?
- 原則1日単位であること(労使協定により時間単位年休を導入したときを除く)(法定の年休)
- 就業規則で自由に付与する単位を定めることができる(会社休暇)
7)その年度内に取得できなかった分を買い上げてもよいか?
- 時効の2年間経過後において時効消滅分を買い上げることはOK(法定の年休)
- 未取得分を買い上げることができ、制限はない。ただし、労働時間短縮の趣旨からいうと好ましくない(会社休暇)
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社員の個々の事情に対応できるよう(たとえば教育訓練休暇、病気療養休暇など)、会社休暇を設定することは、社員の家庭と仕事の両立、健康の維持・回復などを促すのに有効な方法といえます。
新しい年がスタートしたことですし、法定の年休との違い(発生要件や法的な効力など)を踏まえたうえで、いちど会社休暇のあり方を検討してみるのはいかがでしょうか?
使い勝手がよくないなど、利用率の低い会社休暇をいっそのこと廃止し、かわりに社員からニーズの高い会社休暇を設定できると合理的です。
人材獲得が難しいなか、今いる社員を簡単に辞めさせるべきではありません。できる限りの離職防止策を講じることは、企業に求められる課題だと思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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