年休を消化してから産前休暇に入るのはダメですか

テーブルのうえに広げられた雑誌。雑誌のページのうえに置かれたカモミールの花。白のテーブルクロス。

社員「12/10から産前休暇ですが、あるだけの年休を12/10から消化して、そのあとで産前休暇に入りたいのですが・・・」

上司「・・・(産後復帰後のために年休を残しておいたほうが・・・年休より産前休暇を優先してほしい(;´Д`))←心の声」

 

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労基法では、産前産後休暇中における賃金について有給とすべきことを義務付けていません。その取扱いは当事者間の自由にゆだねられ、就業規則に有給の定めがない限り無給になります(ただし健康保険による出産手当金が支給されます)。

 

生活に影響を与えるため、冒頭のように「産前休暇の一部を年休に替えたい」との申出も少なからずあるようです。

 

そこで今回は、「年休を消化してから産前休暇に入りたい(産前休暇の一部を年休に替えたい)」との社員の申出に会社としてどう対応すべきか、詳しく確認していきたいと思います。

産前産後休暇の取扱い

ページがめくられた本。うさぎのぬいぐるみ。

会社は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性社員が休業を請求した場合には、その者を就業させてはならないし、産後8週間を経過しない者は就業させてはなりません(労基法65条)。

 

産前の休業については、女性社員の請求が条件となっています。つまり、取得するのかしないのか、取得するとしてもどのくらいの期間を取得するかは、本人の意思に任されています(女性社員の請求がなければ、与えなくても法律上は問題ありません)。

 

これに対して産後の休業は、本人の請求があってもなくても、たとえ働きたいと希望しても、8週間は与えなければなりません

 

ただし、冒頭でお伝えしたように産前産後休暇中の賃金の取扱いは当事者間の自由とされており、無給の状態が続くときは生活に影響を与えるので、「産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障ないと認めた業務に就かせることは、差し支えない」とされています(労基法65条2項)。

年休の申出を断ることができるか

半分にページが折られた雑誌。カエルの顔をした棒チョコ。

年休は、社員が年休を取得したいと申し出ることによって成立します。会社は、「事業の正常な運営を妨げる事由」がない限り、社員が希望するその日に年休を付与しなければなりません

 

「事業の正常な運営を妨げる事由」があるときには、その日でない日を年休とするように指示する、会社の時季変更権の行使が認められています。

この「事業の正常な運営を妨げる事由」については、個別の具体的な状況において客観的に判断しなければなりません

 

産前休暇を取得するかどうかは、女性社員の意思に任されていますから、「年休を取得してから産前休暇に入りたい」との申出があった場合には、会社はその年休取得の時季が「事業の正常な運営を妨げる場合」にあたらない限り、年休を付与しなければなりません。

 

つまり、「年休よりも産前休暇を優先してほしい」との理由だけでは、年休の申出を断ることは難しいということになります。

ただ、すでに取得した産前休暇を年休に振り替えたい、との希望に応える義務は会社にありません(会社の計らいにより、年休に振り替えることは差し支えありません)。

 

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会社側には、本人に対する期待や希望などさまざまな考えがあるでしょうが、女性社員にとっても、働き方を変えざるを得ないさまざまな事情があります。

そのひとそのひとの事情に応じて、最も有効な制度の使い方をすることが大切だと思います。

 

復職を考えて働き続けるつもりのようであれば、年休、産前産後休暇、育休などの仕組みを考慮しながら、産休にはいるまでのスケジューリングを本人といっしょに考えたいですね。

トレイに並べられたショートケーキ。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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