「毎日の出社や退社の時刻を社員本人に自由に決めてもらいたいです」
朝の冷え込みで布団から出たくなくなる季節になりました。もう少し布団の中にいたいけれど仕事があるし・・・誰もが抱える寒い季節の葛藤ですよね。だからというわけではないと思いますが、冒頭のようなご相談をいただくことがあります。
始業・終業時刻を社員本人の自己選択によるものにするには、「1日単位のフレックスタイム制」という方法があります。
これは法律上のフレックスタイム制ではなく、社員本人の自己選択による自動的な始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ制度で、運用にあたっては注意点があります。
そこで今回は、1日単位のフレックスタイム制をうまく活用するためのポイントについて詳しく確認していきたいと思います。
就業規則による自動的な繰り上げ・繰り下げとは?
まず、冒頭にある「自動的な始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ制度」とはどんなものであるのか、みていきましょう。
これは、あらかじめ就業規則で一定の事由(条件)を定めておき、それに該当すれば自動的に、始業・終業時刻がその定めにしたがって変更することをいいます。
一定の事由(条件)には、たとえば、私用外出などで就業時間中に中抜けして職場から離れる時間がある場合に、自動的にその相当する時間分だけ労働時間を繰り下げる、といったことなどが考えられます。
就業規則には「私用外出などの職場離脱時間がある場合には、自動的に終業時刻は繰り下がる」旨を規定しておきます。
そうすると、「私用外出」という繰り下げ条件にかかる事実の発生によって、会社のOKサインを必要とせず、当然に変更の効力が生じることになります。
1日単位のフレックスタイム制の注意点
1日単位のフレックスタイム制とは、就業規則に始業・終業時刻を定めておきますが、社員本人が自主的にその始業・終業時刻を繰り上げ、または繰り下げて自動的に始業・終業時刻を変更する制度です。
社員本人の自主選択による自動変更制により、自ら自由に(あるいは1日単位の始業・終業のフレキシブルタイムを設け、その時間の範囲で始業・終業時刻を繰り上げたり、繰り下げる)当日の所定労働時間の勤務を行い、当日の所定労働時間を超えて働けば時間外労働になるというものです。
冒頭でお伝えしたように、法律上のフレックスタイム制(社員が一定期間のなかで決められた一定時間数働くことを条件として、1日の勤務を自由に開始し、終了できる制度)ではありません。
そのためこの1日単位のフレックスタイム制を運用するには、次の4点について注意する必要があります。
1)始業・終業時刻は定めておくこと
・労基法で定めるフレックスタイム制ではないので、一定の始業・終業時刻を定めておかなければならない
2)始業・終業時刻の自己選択による繰り上げ・繰り下げ制であること
・1日単位のフレックスタイム制の要件である繰り上げ・繰り下げについて、就業規則で定めておくこと(たとえば「対象労働者は始業・終業時刻を自己選択により繰り上げ又は繰り下げることができる」など)
3)実労働時間が所定労働時間を超えた場合は残業代を支払うこと
・始業・終業時刻を繰り上げ、または繰り下げて働いたとしても、たとえば実働8時間の所定労働時間を定めている場合、当日の所定労働時間を超えて勤務をすれば時間外労働になるため割増賃金を支払わなければならない
4)所属長への届出・承認制にしてもよいこと
・法定のフレックスタイム制(始業・終業時刻を社員の決定に委ねるもの)ではないので、前日に始業時刻の繰り上げ・繰り下げ選択につき所属長に届出をさせたり、許可承認を必要とすることにしても問題はない(仕事の進捗状況やオフィスのセキュリティをはじめ職場秩序を維持するために必要なことと考えられる)
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今の時代、人材確保は企業が生き残るための大きな課題です。
いま現在進行形で働いている人に、少しでも長く勤めてもらうためにも(そしてデキる人材を確保するためにも)、働きやすくかつ法律に抵触せず、そして事業の利益を確保できる方法を柔軟に(よくばりに!)考えていきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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