代休(代償休日)とは、休日労働の事実が生じた後に、その代償として休日を与えることです。
いったん発生した休日労働の事実は消せませんが、社員に休息の機会を与えることで社員の健康を維持できます。
代休と似たものとして「振替休日の社員による指定制」があります。法律上は、振替休日と代休の両者では明らかに異なりますが、一般的に同じものとみられがちです。
企業における実務でも、振替休日の社員による指定制と代休は厳密には区別されておらず、ごちゃまぜになっているケースも多いようです。その企業の慣行的な取扱いによって処理されることがほとんどでしょう。
そこで今回は、振替休日の社員による指定制と代休の違いについて、詳しく確認していきたいと思います。
まずは振替休日と代休を整理
休日の振り替えとは、就業規則で休日として「労働義務のない日」とされている日を、あらかじめ他の労働義務のある日と交換して、休日を労働義務のある労働日とし、他の労働義務のある日を休日としてチェンジする措置のことをいいます。
そこで、本来なら振替休日の日を事前に特定するべきであるけれど、その特定する(指定する)権限を社員に与え、休日の振替措置についてどの日と振り替えて変更するかを社員の指定に委ねることを「振替休日の社員による指定制」といいます。
冒頭でお伝えしたように、代休と同じものとして勘違いされがちです。ここでまず、振替休日と代休の違いを整理しておきましょう。下記のようになります。
- 振替休日(事前の振替)→休日を労働日に変更させるもの
- 代休(事後の振替)→休日労働による疲れを回復させるもの(※労基法上は、代休についての規定はなく、代休を付与するかは企業の任意。法定休日に労働させた場合であっても、割増賃金の支払いで法違反とならない。)
振替休日の社員による指定制と代休の違い
では、振替休日の社員による指定制と代休の違いをみていきましょう。
代休は、休日労働の代償的な休日であり、休日労働の事実を取り消すことはできないため、休日割増賃金の支払い義務が会社には生じます。
一方、振替休日の社員による指定制は、あくまでも事前の休日の移動による交換的な変更であり、社員による一定期間中(法定休日であれば所定の4週間以内)の振替休日の指定というかたちで休日の移動(変更)を行っているものです。
つまり会社と社員の間で、たとえば「来週の日曜日の休日は4週間以内で営業日と振り替えて変更を行うが、振替休日の日は社員の指定する日とする」といった合意ができているということです。
この社員による振替休日の指定は、振替の対象となる休日が到来する前に行われることが望ましいです。けれど到来後に行われたとしても、その対象日は後日の社員の指定により休日となる日と振り替えられることが制度として明らかであるなら、すでにその日は休日ではなく労働日に変更していることになりますから、休日労働にはあたりません。
休日労働を行うにあたって、代休について「休日労働の代償として1日の休日を付与します。その代償的な休日の日は社員が決めて会社に届け出て承認を得ること」と会社と社員の間で取り決めたとして、一見すると振替休日の社員による指定制と同じようにみえても、これは休日と労働日との交換的な変更を行うものではありません。
このように、振替休日の社員による指定制と代休は、会社と社員の間での意思表示の内容、目的、効果について相異なるものです。
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以上でお伝えしてきたとおり、振替休日(社員による指定制を含む)と代休では法律的な効果が異なってきます。
いろいろな企業の就業規則を拝見していると、振替休日と代休について、ひとつの条項で定めているケースを見かけますが、これが両者をごちゃまぜにして処理してしまう原因のひとつだと思います。
混乱のもとを解消するためにも、これからは別々の条項で規定することをおすすめします(^^♪
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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