当社では、これまで6月と12月にボーナスを出してきたが「毎年必ず6月と12月に賞与を支給しないといけない」となるのかな?業績が悪い年に賞与の支給はキビシイから、減額したり、不支給にすることは、法律的にアウトになるの? (スタートアップ会社 役員 談)
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ほとんどの社員にとって賞与は「支給されて当たり前のもの」という感覚かもしれません。
ですが「賞与の支給がお決まりのもの」ということなら、会社にとっては支給すること自体がリスクとなる可能性もあります。いまの時代では、毎年イケイケどんどんで業績が伸びていくとは限らないからです。
そこで今回は、毎年の賞与支給はお決まりのものとして慣行化してしまうのか、あわせて減額や不支給はダメなのかについて、詳しく確認していきたいと思います。
賞与の支給は慣行化するか
賞与とはどういったものなのか、行政通達では次のような内容が示されています。
- 原則、社員の勤務成績に応じて定期的または臨時的に支給されるもの
- その支給額はあらかじめ確定されていないこと
- 定期的に支給され、かつその支給額が確定しているものは、どんな名称であっても、賞与とみなさないこと
そこで、この賞与を支給する義務があるかどうかも、就業規則の定め方によることになります。
就業規則の規定が「毎年6月と12月に賞与を支給することがある」くらいの内容にとどまる場合には、「賞与を出してください」という法律上の給付請求権は社員に発生しません。
では、毎年6月12月に賞与を支給してきた事実があると、それが不文律として「賞与は毎年(当たり前に)支給するもの」と慣行化するのでしょうか。これについて、業績がどれだけ悪くても必ず支給するということではなく、たまたま好業績が続いたので賞与を毎年支給したにすぎないという場合には、「もらって当たり前」というように社員に賞与を請求する権利は発生しません。
「これまで前年度実績を下回らない額の賞与が支給されてきたからといって、具体的な賞与請求権に基づく労働慣行の存在を認めることはできない」とした裁判例もあります。
賞与の減額、不支給はダメ?
では次に、賞与の額が前年を下回ったり、冬ボーナスが夏ボーナスより減額になったり、業績不振のため不支給となることはダメなのでしょうか。賞与について次のような内容が示された裁判例があります。
- 賞与は勤務時間で把握される働きに対する直接的な対価ではない。社員が一定期間勤務したことに対して、その勤務成績に応じて支給されるもので、本来の給与とは別のものであり、一般的にその金額はあらかじめ確定していない。
- 社員の労務提供があれば会社からその対価として必ず支払われる雇用契約上の賃金とは異なる。契約によって賞与を支払わないものもあれば、一定条件のもとで支払うことを定めるものもある。
- 賞与を支給するかどうか、支給するときにはどんな条件によるのかはすべて当事者間の特別の取決め(または就業規則など)によって定まる。
このように、賞与とは原則として企業の業績や社員の勤務成績に応じて決定されるものです。
よって、前年を下回ったり、前期より減額になったり、赤字のため不支給となっても、社員の賃金請求権を原則として妨げるものではありません。
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賞与の支給には、(賞与支給にかかる)評価期間に働いたことへの「ご褒美」と、将来の働きに対する「期待」という2つの意図が含まれています。そして賞与の支給は、前述のように就業規則などによって、その会社オリジナルのルールで決められるものです。
ですから賞与の支払いについて、「支給日に会社に在籍していること」という条件を定めても違法ではありません。
賞与支給のルールは、社員の前向きな意欲を引き出し、励みとなるよう柔軟によく考えたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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