「緊急の案件を打ち合わせるため、部全体の会議を早朝に行わないといけないことも。そんなとき、フレックスタイム制が適用される社員には、早朝会議への招集をかけてもいいの?」
この春から働き方改革関連法が施行されたこともあり、柔軟な職場環境づくりに尽力される企業は多いと思います。
社員がライフスタイルに合わせて働けるよう、その選択肢を提供するべくみなさん知恵を絞られているなか、冒頭のようなギモンを持たれる人事担当者さんもいらっしゃるようです。
フレックスタイム制においては、始業・終業時刻をいつにするかを社員の自由に委ねられるので、早朝の会議に出なくていい?いや、そもそも招集してはいけない?と悩まれるのでしょう。
そこで今回は、フレックスタイム社員に対する早朝の会議への出席を要請してもいいのかどうかについて、詳しく確認していきたいと思います。
フレックスタイム制とは
改めてフレックスタイム制とは、「始業・終業時刻をいつにするかを社員が決めてもよい」労働時間制度です。
フレックスタイム制が適用される社員に対して、コアタイム(必ず働かなくてはいけない時間帯)は別として、フレキシブルな時間帯について「〇〇時に出勤しなさい」や「〇〇時まで働きなさい」と、始業・終業時刻を指定する業務命令は原則できません。
けれど、業務上やむを得ない取引先との商談、関係官庁の調査(税務調査など)、冒頭のように緊急の部署全体ミーティングなどがあるため、担当者としてどうしてもそれらの会合に出席しなくてはならない場合もあるでしょう。
その担当社員がたとえフレックスタイム制の適用者であったとしても、会合への出席が必要な旨を本人に伝えて、その時間帯の出勤を要請することは、企業社会の通念上もっともなことであり、業務運営上許される行為として考えられます。
つまり、フレックスタイムが適用される社員は、通常の時間帯で働く社員のような始業・終業時刻の拘束は受けないというだけです。
業務上の必要性があり、本人の担当業務からみてもその業務を誠実に行うことが当然の義務として要求されている場合に、フレックスタイム制だからといって、それを適正に行わずに放棄してもよいわけではありません。
フレックスタイム社員が果たすべきこととは
つまりフレックスタイム制が適用される社員には、日頃労働時間の自主的な選択が許されているがゆえに、緊急でやむを得ない場合や重要な業務がある場合、それに対応できるように自分自身のスケジュールをマネジメントすることが期待されているといえます。
通常勤務の社員よりも、柔軟な業務の遂行と自己責任という高度なセルフマネジメントが課されているともいえるでしょう。
ですから、フレックスタイム制が適用される社員としては、業務上の必要性に応じて会議などに間に合うように自主的に出勤し、また居残りが業務上必要なときには自主的にスケジュールを調整するなどの、セルフマネジメントの義務があると考えられています。
もし社員がフレックスタイム制を理由にして、労働時間をセルフマネジメントせずに、業務に重大な支障をきたしたり、会社の信用を損なったりしたときには、制度の趣旨を濫用し、就業秩序に反して業務に支障を生じさせたものとして、ペナルティー(懲戒処分)の対象となり得ます。
実務的な対応はどうする?
フレックスタイム制の適用社員が重要な業務を対応しなければならない場合、実務的には次のような方法も考えられます。
コアタイムを設定している場合には、その労使協定で定めるところにより、そのコアタイムを繰り上げる、もしくは繰り下げる、という方法です。
労働時間の繰り上げ、繰り下げはもちろん従来から労基法上も可能とされています。フレックスタイム制の場合においても、コアタイムの繰り上げ、繰り下げ自体は禁止されていません。よってこの旨を労使協定に定めて、制度として運用するということです。
社員がライフスタイルに合わせて働けるよう、その選択肢を増やすために導入するはずのフレックスタイム制ですが、これを濫用して周囲に迷惑をかけたり、会社の業務に支障を生じさせようとする社員に対しては、たとえ(フレックスタイム制の)対象業務の従事者であったとしても、個別的に適用しないか、もしくは適用除外とすることも考えられるでしょう。
せっかくの選択肢であるのに残念なことですが、通常勤務の社員として時刻指定勤務を命じるということです。
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柔軟な働き方には、「責任(自分で働き方をマネジメントする)と成果(やるべきことはやる)」が必ずついてきます。「ルーズでいい」「自分の都合でやっていい」など、働き方の「柔軟な」部分だけのいいとこどりはできません。
その意識を職場のメンバー全員で共有し、みんなが持てるチカラを発揮できる環境づくりを整えていきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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