とある職場のAさん、今日は朝から少し落ち着きがありません。どうやら、放置していた親知らずがズキンズキン痛むようです。
パソコンに向かうも時間を追うごとに痛みが強くなり、仕事はおろか、居ても立っても居られなくなりました。
そこで上司と同僚に事情を話して許可をもらい、仕事を抜け出して歯医者さんに向かうことにしました。
歯医者さんから戻ってきたAさん、応急処置をほどこしてもらって落ち着きを取り戻したようです。
「歯医者さんに行った分の仕事の遅れを取り戻すゾ!('ω')ノ」・・・張り切って終業時刻後も仕事に取り組む様子です。
このように私用外出から戻ったあとで残業した場合、1日の労働時間としてはどのようにカウントするとよいのでしょうか。今回はこの件について、詳しく確認していきましょう。
実労働時間主義でカウントする
冒頭のAさんのように、仕事の合間に歯医者さんに行くなどの私用外出中は、会社の指揮監督下にありません。
職務を誠実にまっとうしなければならない、会社の支配下から離れているわけですから、この時間は労基法上の「労働時間」には該当しません。
では、私用外出のため進まなかった分の仕事を取り戻そうとして、終業時刻をオーバーして残業したような場合は、どのように考えるべきでしょうか。
結論からお伝えすると、その日に実際に労働した労働時間数が1週40時間、1日8時間をオーバーしないかぎり残業時間(時間外労働)にはカウントしません。というのも、労基法は実労働時間主義をとっているからです。
つまり、労基法で定める「1日について8時間、1週間について40時間」というのは、会社の指揮命令下に実際に置かれた時間のことを指しています。休憩時間や私用のために外出した時間、遅刻時間など、現実に会社の指揮命令下にない時間はこれに含まれません。
したがって、労基法においては始業時刻からカウントした労働時間の中から、「会社の指揮監督から離れた時間(私用外出時間など)」を除いて計算することになります。この離脱時間を除いた、実労働時間(実際に会社の指揮命令下で働いた時間)が1日8時間を超えない限り、残業(時間外労働)の問題は発生しません。
所定時間外労働と法定時間外労働時間を区別する
前段でお伝えしたのは、法定時間外労働の取扱いについてです。法定時間外労働というのは、労基法に定める労働時間を超える法定の時間外労働ということです。
けれど、一般の企業において残業(時間外労働)と言う場合には、必ずしも労基法上の時間外労働のみを指すものではありませんよね。
その企業で定めている労働時間を超える労働、つまり所定労働時間を超える労働をも残業(時間外労働)という場合は多いのではないでしょうか。
ですから所定時間外労働の取扱いとして、「許可を得た場合の私用外出はそれらの時間を働いたものとして労働時間にカウントする」との規定が就業規則に定めてあったり、もしくは慣行として労働時間に算入する場合もあるかもしれません。
企業によって取扱いが異なることがあっても、もちろんそれは差し支えありません。所定時間外労働については、どういった場合にそれが成立するかは、その企業において独自に決めることができるからです。
繰り返しになりますが、法定労働時間外労働の取扱いにおいて私用外出時間などは除外される、ということを区別して理解していただければと思います。
・・・んんん???( ,,`・ω・´)ンンン? もしかして余計に頭の中がややこしく混乱してしまったでしょうか?
そこで、この関係について例を下記に示しておきます。今一度、自社の取扱いを振り返る機会にしていただければと思います。
(前提)
・8時間労働のうち、私用外出が1時間あった
・終業時刻をこえて2時間延長して働いた
【法定労働時間の計算】←労基法の定め通り
10時間-1時間=9時間(1時間が法定時間外労働)
【所定労働時間の計算】←その会社の取扱いによる
※「許可を得た場合の私用外出はそれらの時間を働いたものとして労働時間にカウントする」とする規定が就業規則に定められている
8時間+2時間=10時間(2時間が所定時間外労働)
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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