みなさんの会社では、半日単位年休の制度をじょうずに運用されているでしょうか。
半日単位年休の存在自体を知らないというケースに意外と多く出会いますし、半日単位年休と時間単位年休の違いがわからない、といったこともよくお聞きします。
後で詳しくお伝えしますが、時間単位年休は法律上の年休制度ですが、半日単位年休は法律上の制度ではありません。 そのため両者をちゃんと区別する必要はありますが、年休取得に関する選択肢の幅が広がります。
そこで今回は、半日他に年休にまつわる次の3点について詳しく確認していきたいと思います。
- 半日単位年休と時間単位年休の違い
- 半日単位年休の取扱い
- 就業規則で定める半日単位年休の活用法
半日単位年休と時間単位年休はどう違うのか
もともと年次有給休暇について行政解釈では、「1労働日を単位とするもので、分割することはできない」とされていました。のちにこの解釈が改訂されて、「半日単位の付与も会社が認めれば可能」ということになりました。
これは、社員が半日単位での年休取得を請求してきても、会社は与える義務はないということです。あくまで会社が認めるのであればかまわないと解釈されています。
その後新しく、労使協定に基づく時間単位の年次有給休暇制度が認められることになりました。平成22年4月1日施行の改正労基法によるものです。
このように時間単位年休は法律上の年休制度ですが、半日単位年休は「日単位年休」の中の任意の制度であり、法律上の制度ではありません。
半日単位年休と時間単位年休は異なるものであるため、両者を区別する必要があります。
例えば以下のような扱いは認められません。
- 半日単位年休の取得期間を「4時間分の年休取得」として管理すること
- 5時間の時間単位年休を「半日+1時間」として管理すること
半日単位年休の取扱い
では半日単位年休の「半日」について、文字通り1日の半分とはいえ、具体的にはどう考えるといいのでしょうか。
これは、一般的な企業社会の1日の取扱いにならうことと解釈されています。
つまり「半日」とは、正午で区分する午前(始業時刻からランチ休憩まで)と午後(ランチ休憩後から終業時刻まで)を意味します。
たとえば、始業時刻の9時~ランチ休憩の12時で3時間、ランチ休憩後の午後1時から終業時刻の5時半までの4時間半というように、午前の半日と午後の半日の労働時間が異なるということもあるかと思います。これについては、いずれも0.5日分の年休取得として取り扱います。
一見すると「午後の半休のほうがオトク(午前の半休は損)?」といった印象を受けるかもしれませんが、合理的な取り扱いとして考えられています。仕事の段取り、休むための同僚への引継ぎを考えると、正午(ランチ休憩)で区分するとスムーズに運ぶからです。
仮に、「半日=4時間」としてしまうと、「労働時間の途中の4時間」として休憩時間の延長かのような一時的な休みとなってしまいます。それは心身のリフレッシュという年休の趣旨・目的から逸脱しかねませんので、正午で午前と午後の「半日」を区分することになります。
就業規則で定める半日単位年休の活用法
半日単位年休を採用する場合には、その運用について就業規則に規定し、オフィス内で共有しておきましょう。
もともと半日単位年休は例外の取扱いなので、仕事がうまく回るようオフィスの実態に即して運用することがポイントとなるからです。
たとえば次のような内容を、検討しておくことをお勧めします。
・半日単位年休を取得できる回数を制限するか?
(たとえば40日の年休を半日単位で取得すると80回となる。
頻繁に細切れに休んでしまうことで逆にパフォーマンスが落ちる懸念があるなら制限をつけるのもひとつの方法。)
・事前に上長の許可を設けるか?
(半日単位年休を設けるかは会社の任意であり、社員の権利としての年休ではないので、許可制にしてもOK。
仕事の進捗状況を判断することが目的。)
・半日単位年休で生じた端数をどうするか?
(半日単位年休は、あくまで便宜的なものであって法定のものではないので、0.5日単位の繰り越しは認められない。
0.5日切り捨てとなる。もしくは優遇措置的に1日として切り上げるか?)
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繰り返しになりますが、半日単位年休を採用するかどうかは会社の任意であり、会社に義務付けられているものではありません。
とはいえ、この4月からの法改正(詳しくは過去記事「法改正で年5日休むため会社と社員でやるべきこと、捨てること」をご覧ください)を前に、年休取得の促進がなかなか思うようにいかない、との課題を抱える職場も多いのではないでしょうか。
仕事がうまくいくうえにプライベートも満足できる。そんな一挙両得がかなう年休取得の選択肢が増えるよう、上記の半日単位年休の活用法をぜひ参考にしていただければと思います。
半日単位年休をうまく活用することで、職場での働き方がいまよりも柔軟になると、企業としてのアピールポイントも増えることになりますね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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