「採用の応募書類は個人情報でいっぱいです。個人情報の保護に気をつけるといっても、具体的にはどうやって扱えばいいのか・・・」
新卒者と入社時期を同じ4月に合わせられるよう、1月に募集をかける企業は多く、意外とこの時期は採用市場が活発です。
企業の採用活動では、当然のことながら、さまざまな書類(データ)の提出を応募者に求めることになります。そのため、企業の採用担当者さんから採用の応募書類に関してご相談いただくことがあります。
応募書類にはたくさんの個人情報が記載されていますし、採用面接を実施すればそれ以外からも個人情報を得ることになります。
そこで今回は、採用活動で応募者から提出される書類を企業はどのように取扱うべきなのかについて、詳しくみていきたいと思います。
個人情報の保護と応募書類の関係
繰り返しになりますが、採用活動における応募書類には多くの個人情報が記載されています。ですから会社は社員を採用する段階から、個人情報の保護に気をつけなければならないことになります。
個人情報保護法をみてみると、「個人情報取扱事業者(会社のこと)は、個人情報を取り扱うときには利用目的をできる限り特定しなければならない」旨が示されています。
つまり、利用目的をできる限り特定して明示すれば個人情報を取得できますし、その利用目的を果たすために必要な範囲内であれば取り扱うことができます。
けれどよくよく考えてみると、たとえば学歴、職歴といった企業が求める応募書類における個人情報については、採用の選考上のデータとして利用されるのは明らかといえます。
また採用選考だけでなく、採用後の適切な人材配置を決めるうえでの参考資料となることも明らかです。
ですから、採用活動で企業が応募者に求める書類について、個人情報の利用目的を「採用選考のため」とわざわざ明示する必要性はないと考えられます。また、採用の募集に応じて応募書類の提出があったということは、利用目的は採用選考等のためである、との応募者からの「黙示の同意」があったともいえます。
採用の募集要項に書いておきたいこと
ただし企業として考えておくべきは、今日のプライバシー保護を重んじる社会の流れです。
企業の個人情報に対する姿勢が、かなり厳しく問われる時代といえるかもしれません。
個人情報の保護を十分尊重している企業であると、応募者(またその家族など)に安心感を与えるため、採用募集の段階から個人情報の利用目的を明示しておくとよいでしょう。
少なくとも次のような旨を、採用の募集要項に書いておかれてはいかがでしょうか。
(実際に記載される際には、表現をよしなにアレンジしてくださいね)
- 応募書類に記載された個人情報は、採用選考の目的のみに利用すること
- 採用後は就業規則の定めによって、人材マネジメント上の基礎資料として利用すること
- 採用されなかった方の個人情報は、当社で責任をもって破棄すること
- 応募書類の返却には応じかねること
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採用が決まって入社してくる社員の履歴書を社内(配属される部署)で回覧している、といったお話を伺うこともありますが、前段でお伝えしたように、個人情報はむやみに共有せずに、必要最小限の範囲で管理すべきでしょう。
特に、いまの若い世代では「仕事とプライベートをごっちゃにしたくない」と、会社生活と私生活を別々に分けたがる傾向がみられます。
もちろん仕事はひとりではなくチームで行うものですが、個人の私的な領域を尊重する気遣いは忘れずにいたいものですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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