「社員がいつ出勤してきて、またいつ帰ったのか、労働時間を把握して管理するのはタイムカードでしか認められていないのですよね?そういうことが法律で決められているのですよね?」
会社には、社員がどのくらい働いたのか、労働時間を把握する義務があります。
そのため会社の労働時間を把握する義務について、冒頭のようなギモンをお持ちの人事担当者、管理職の方は少なくないようです。
・・・ですが、実は、ちょっとした誤解もあるようです。
そこで今回は、労働時間の把握や管理はタイムカードでしか行ってはダメなのか、詳しく確認していきたいと思います。
会社の労働時間の把握義務とは?
労働基準法は、労働時間、休日、休暇などについていろいろな規制をしています。特に労働時間に関しては、会社のみが法律の遵守義務を負っています。
社員は会社の業務命令があれば、たとえ深夜になろうとも、そのまま仕事をし続ける可能性が高いと通常考えられるからです。
労働基準法では、労働時間と休日について週40時間労働制、週1回または4週4日の休日の付与が規定されています。これに違反した場合には刑事罰が科せられることになっています。
ですから、会社が違反行為をしないためには常に社員の労働時間を把握して、いま何時間働かせているのか、法律上の許容時間はあと何時間あるのか、を知っておく必要があるのです。
このように、会社が社員の労働時間を把握しておく義務はとても重大な役割をもつことになります。
なお、労働時間の把握義務の法律上の根拠としては、労基法で賃金台帳の作成義務が定められているところによります(労基法第108条)。
賃金台帳の作成には、社員ごとに労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数などを記入しなければいけないことになっているため、おのずと社員の労働時間を把握しなくてはいけないことになります。
労働時間の把握はタイムカードでないとダメ?
前段のように会社には社員の労働時間を把握し、賃金台帳に記入しておく義務があります。
そのため、タイムレコーダーの打刻によるタイムカードを利用している場合も多いことだと思います。けれど法律上は、タイムカードの使用が特別に義務付けられているわけではありません。
タイムカードを用いなくても、たとえば出勤簿に印鑑を押す、守衛が各人ごとの出勤状況や労働時間数をチェックする、社員が営業日誌のようなものを利用して、自己申告制によって自分で記帳する・・・といった方法をとってももちろん構いません(最後の社員による自己申告制については、過去記事「残業の自己申告制をうまくいかせるコツ」をご覧ください)。
ようするに、会社が社員それぞれについて、その労働日数や労働時間を確実に把握しておくことができればOKだということです。
とはいえ、もともと賃金台帳の作成は、労働時間を正確に記録しておくことによって会社と社員の間での無用な争いを回避するために義務付けられているものでもあります。また、労働基準監督官がその提出を求めた場合には、会社はそれに応じる必要があります。
ですから労働時間の把握は、正確性と公正性が担保できるような方法でなければなりません。
たとえば、社員の人事評価にあたって、「出勤日数や遅刻、早退などは考慮せずに営業成績をもって評価する」という方針のもと、その意図を明確に社員へ示すために、出勤簿やタイムカードを廃止することは、それぞれの企業の問題であるので自由です。
けれど、社員の労働時間を把握することは、法律で決められた会社の義務ですからこれを怠ることはできません。
まとめると、出勤簿やタイムカードという方法に限定はされないけれど、何らかの方法によって適正に労働時間を把握し、算定する義務が会社には課せられていることになります。
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普段であれば出勤簿に押印して、始業時刻になると担当者が出勤簿を回収することにしているが、休日出勤のときには担当者が必ずしも出勤しているとは限らないので、いつもどおりの方法ではうまくいかない・・・など、労働時間の把握について、それぞれの職場においていろいろな事情があると思います。
また、前述のように人事評価の方針もさまざまでしょう。
「この方法しかない」と窮屈に考えずに、その職場にマッチしたそれぞれの方法を検討したいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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