台風や大雪という悪天候時には、事業を継続させるための現場での対応が必要です。突発的な災害の復旧支援の場合だけでなく、サーバー攻撃でのシステムダウンへの対応や大規模リコールなどの場合も同じです。
事前に想定できない事象の発生時には緊急対応の業務が増え、刻々と変わる状況のもと調査や情報伝達が求められます。業務の停滞が許されない状況では夜通しで作業を行わなければならないこともあるでしょう。
徹夜で現場対応にあたらなければならないとき、勤怠管理において労働時間をどうカウントすればいいのか?と迷われるかもしれません。
徹夜での継続勤務については、次の2パターンに分けて考えるとわかりやすいので、詳しく確認していきたいと思います。
- 平日の朝から晩まで作業が続き、なおも翌日の始業開始時にまで及んだとき
- 前日の作業が長引いて翌日の法定休日に及んだとき
徹夜勤務パターン1:平日の一昼夜勤務
労基法における「1日」とは、原則として午前0時から午後12時までの暦日のことをいいます。
けれど夜通しの継続勤務が2暦日にわたる場合は、たとえ暦日をまたいでいたとしても一勤務として取り扱い、その勤務は仕事がスタートした日の分の労働時間としてカウントされることになります。
例をあげて具体的にみてみましょう。
【例】*前提:始業時刻9:00、終業時刻18:00
・月曜日10:00に開始された現場の復旧作業が長引く。
・ようやく作業が終了したのは翌日火曜日の18:00だった。
この場合、月曜日の時間外労働のおしまいがいつになるか、がポイントです。一見すると「翌日火曜日の18:00まで?」と思いがちなので、注意してください。
正解は「月曜日の時間外労働のおしまいは、翌日火曜日の9:00まで」となります。火曜日の9:00から18:00の所定労働時間は、月曜日の時間外労働にはなりません。
まとめると、一昼夜勤務した場合、翌日の所定労働時間が始まるまでが時間外労働となります。翌日の所定労働時間は前日の時間外労働とはなりません。なお、深夜時間帯の勤務については、深夜業の割増賃金が加算されます。
徹夜勤務パターン2:翌日の法定休日に及んだとき
法定休日は、きっちりと暦日制をとり、午前0時から午後12時までの休業のことをいいます。
この法定休日を含む2暦日にまたがる勤務を行った場合、法定休日である日の午前0時から午後12時までの時間帯における勤務が休日労働としてカウントされることになります。前段のような継続一勤務の考え方はとられませんので、注意が必要です。
例をあげて具体的にみてみましょう。
【例】*前提:始業時刻9:00、終業時刻18:00
・平日10:00に開始された現場の復旧作業が長引く。
・ようやく作業が終了したのは翌日の法定休日の18:00だった。
この場合、前日から勤務が継続していたとしても、法定休日の午前0時の暦日に入った(日付が変わった)ところからは、休日労働としてカウントされ、時間外労働としてはカウントされません。ここで休日労働と時間外労働に分断してカウントすることになります。
つまり、平日の法定労働時間(8時間)を超える18:00から同日の午後12時までの時間帯の勤務は時間外労働となり、翌日の法定休日の午前0時から18:00までの勤務が休日労働となります。
なお、両日とも深夜時間帯の勤務については、深夜業の割増賃金が加算されます。
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事業を支障なく続けられるようにするため、いつ起こってもおかしくないリスクに対して、みなさん常日頃から準備していらっしゃることでしょう。
緊急対応時の労働時間や給料計算の取扱いにも手間取ることがないよう、この記事が「そなえ」になればと思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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