先日、「生理休暇の申請への対応に困っている」と知り合いの男性の経営者から困惑気味にアドバイスを求められた。男性経営者・管理職にとって生理休暇の取扱いには「何か触れてはいけないもの」といった意識があるのかしら・・・(=_=)(女性経営者 談)
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「セクハラとの誤解を受けないか?」「妙な空気にならないか?」と伝え方に迷う男性経営者・管理職は多いかもしれません。女性にしても「生理休暇を取ると周囲から特別な目で見られそう」と懸念する人も少なくないようです。
女性からも男性からも何やらタブー視されがちな生理休暇の取扱いですが、制度をよく知らないがゆえのこともあるのではないでしょうか。
そこで今回は、職場で誤解を生まない生理休暇の取扱いについて詳しく確認していきたいと思います。
生理休暇を取得できるとき
実は、法律には「生理休暇」との条文の見出しはありません。
男女雇用均等法の制定の際、男女平等の観点から廃止が主張されましたが、「生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置」として、労基法の規定を変更して存続となりました(※以下、便宜上「生理休暇」の表現を用います)。
医学的な根拠はないものの、生理痛で立ち仕事ができないなど「就業が著しく困難な女性」は現実にいるためです。
したがって、生理休暇は生理日であるというだけでは休暇を請求することはできません。あくまで生理痛がひどい、生理期間中で健康状態が落ちている、など「就業が著しく困難な状態にある」場合のみ請求することができる制度です。
社員が自分の勝手な判断で生理休暇をとって休んだとしても、客観的にみて生理日の就業が困難な状況でなければ本来は欠勤となるべきものです。
なお、この生理休暇は無給であっても差し支えなく、精皆勤手当の計算にあたっては、生理休暇をとった日数分の減額を行ったり、もしくは不支給とすることも原則として違法ではありません。
ウソをついて生理休暇をとると?
前段の通り、生理休暇をとるには客観的に生理日の就業が著しく困難、という要件が必要であり、社員にはその目的に沿って取得する信義則上の義務があります。
けれど、「生理休暇をとってアウトドアに出かけた」「バーゲンに合わせて生理休暇をとった」など、ウソをついて取得の濫用があった場合、会社としてはどのように対応するとよいのでしょうか。
生理休暇の取得に際して、「会社側は医師の診断書のような厳格な証明を求めないこと」とする通達があるので、社員の意思表示のみで取得できることになります。
とはいえ、生理休暇をとってスキーや登山に行っていた、といった事実が判明すれば、休暇は取り消されて欠勤扱いとなります。
法律上の請求権がないのに請求した(生理休暇をとった)からです。もしこれが故意であれば、懲戒処分の問題となることも考えられます。
実際に次のような判例があります。
- 生理休暇の要件を満たしていないのに、生理休暇を取る旨を会社へ連絡
- 深夜へ長時間かけて遠路はるばる旅行し、民謡大会に出場した
- このバスガイドは懲戒処分にあたる規則違反とされた
目的をハッキリさせて対応すること
もし、「生理休暇で休んでいた〇〇さんが、ザックを背負ってトレッキング姿でいるのを駅で見かけた」「△△さんはバーゲンの時期になるといつも生理休暇で休む」といった、どうも「就業が著しく困難」という客観的な条件を満たしているとは思えない状況にあるときには、会社は本人に対して医師の診断書など、就業が困難であることを立証するように求めることができます。
このような場面では、男性上司が本人に伝えるときにはセクハラと受け取られないか?との懸念があるかもしれません。
伝え方のポイントとしては、目的を明確にしたコミュニケーションを心がけること。「目的のわからない会話」は、コミュニケーション上のすれ違いを生みやすく、相手も身構えてしまいがちです。
そんなトラブルを回避するためにも、できるだけ「こういう話をしたいと思っています」と、会話の目的がどこにあるかを伝えてあげることが大切だと思います。たとえば話の流れのポイントは次のようになります。
- 生理休暇の趣旨や、目的外使用について確認したいと思っています。
- そもそも生理休暇を申請できるのは、生理痛等のため就業が著しく困難な状態にある場合のみです。生理日であるというだけでは休暇を請求することはできません。
- 法律上の請求権がないのに、生理休暇をとったことが後でわかれば、会社として処分を考えなくてはならないこともありえます。
- あなたが生理休暇で休んでいた日に、トレッキング姿でいるのを駅で見かけた人がいると聞いています。それが事実なら、会社としてはあなたの申請は信頼性を欠くものとして、今後は医師の証明等がない限り、申請を認めにくい。
- 目的外使用する人がいるために、本当に体調が悪いのに生理休暇制度の利用をためらう人が増えると、制度の意味がなくなってしまうので、真摯に考えてみてもらえませんか。
せっかく伝えたいことや聞きたいことがあるのなら、なるべく誤解なく正しく伝わってほしいですよね。
働き手に女性が増えたとはいえ、まだまだ企業の管理職の多くは男性です。
扱いに困るデリケートな問題が生じることもあるかもしれませんが、制度の内容や意義について理解を深め、適切なコミュニケーションを図っていきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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