GW明けは、4月からの新しい環境での緊張が緩まって、連休明けに体調不良を訴える社員がでてきてもおかしくはありません。
メンタルが不安定で欠勤が続く社員に対して、会社が「休職」を命じるケースもありえるでしょう。会社としては、休んでしっかり療養して、また元気に職場へ戻ってきてもらいたいですよね。
休職制度を設けている場合であっても、職場復帰だけでなくその後も継続して働いてもらうための対策を立てておくことが大切です。
そこで今回は、休職ルールにまつわるよくあるギモンとして、下記の2点を詳しく確認していきたいと思います。
- 復帰後にリハビリ勤務する社員の賃金をどうすればいいの?
- 休職期間中の人材マネジメントをどうすればいいの?
そもそも休職制度とは
休職とは、社員に仕事をさせることが困難な事情が発生した場合に、その社員の地位を維持させながら、勤務を免除させることをいいます。
私傷病により長期にわたって勤務することができない場合、雇用契約上の義務を果たせないことになります。本来であれば、会社は正当な事由があるとして、その社員を解雇することができます。
とはいえ、病気というやむを得ない事情もあることから、一般的には就業規則などに規定したうえで、一定期間の休職を会社が認める「休職制度」があります。
休職について定めた労働法上の規制はなく、休職の取扱いについては、あくまで会社が独自に決めるものです(反対にいうと休職は社員の当然の権利ではない、ということができます)。
終身雇用制度のもとで、休職事由が生じた場合にも解雇権を留保し、本人の雇用を継続させることを目的としています。
休職期間満了の際に休職事由が消滅していない場合には退職になるというのも、一般的に就業規則で規定されている方法になります。
復帰後にリハビリ勤務する社員の賃金をどう考える?
職場復帰した社員が従前に行っていた業務ができるまでには、病状が回復していないとき、軽易な業務に就かせることもあると思います。このリハビリ勤務する社員の賃金を休職前の賃金より減額してもよいのか、というご相談をよくいただきます。
(「従来の業務ではなく軽作業しか行っていないのに休職前と同じ給料でいいよね"(-""-)"」といった周囲の不満もあるようで・・・)
結論からお伝えすると、リハビリ勤務により休職前とは異なる業務に就き、この職務変更に伴って賃金が下がる賃金制度をとっている場合には、賃金の減額が可能です。
むしろ賃金の減額というより、たとえば営業職から事務職に職務変更があったことで自動的に賃金に変化があった、と考える方が自然です。
職場復帰したときのリハビリ勤務に対して、本人や周りの社員から疑義が生じることのないよう、職務内容、職種変更によって賃金に変更がある場合は、「休職した社員が復職したとき、勤務内容、勤務時間、賃金、その他の処遇については、その回復状況をみて会社が決定する」といった旨など、具体的な規定を就業規則に定めておく必要があります。
なお、事務職の社員は1、2名程度で、それ以外は現場作業に就く社員という会社もあると思います。このような小規模事業所では軽作業といえるような仕事が社内になく、リハビリ勤務の環境を用意できないこともあるでしょう。この場合、実際に配置転換することは不可能なので、リハビリ勤務を認める会社の義務はないと考えられます。
休職期間中の人材マネジメントをどう考える?
前段でお伝えしたように、休職は解雇までの猶予措置をとる制度です。
労務の提供ができないということは社員の債務不履行にあたり、本来なら解雇事由にあたるはずですが、休職期間に療養して将来的に労務の提供ができる状態に治ゆすることを期待して、解雇を猶予するものです。
ですから社員は解雇を猶予される権利を受ける代わりに、療養に専念する義務があるといえます。
ただしいくら療養のためとはいえ、休職期間中に朝から晩まで自宅内に引きこもっていても気が滅入ってしまいますから、適度のリフレッシュは必要でしょう。
とはいえ、リフレッシュと称してゴルフや海外旅行へ出かけ、そのときの楽しそうな様子を写真をSNSやFacebookに投稿する・・・周りの社員から「療養で休んでいるのに遊んでいるじゃないか」と、不信感や疑問の声があがって無用のトラブルに発展してしまうのは問題です。本人にとっても職場復帰しづらくなり、さらなるストレスを抱えることになりかねません。とても悪循環ですよね。
休職中のリフレッシュの必要性は認めるものの、他の社員から無用の誤解を招かないように、会社として休職期間中の人材マネジメントを考える必要があります。
休職期間中は「完全な労務の提供ができる状態にないので、しばらく休んでください」と働くことを免除しているわけなので、社員は会社の指揮命令下に置かれていません。マネジメントの強制力は十分に及ぶものではないと考えられます。よってゴルフや海外旅行に出かけたからといって、職務専念義務違反にも該当せず、これらの行為をもって懲戒処分にすることは適切ではありません。
ただしあらぬ誤解を生まないよう、誤解を招きやすい行動(国内・海外旅行に出かけるなど)については、会社へあらかじめ相談するよう届け出をしてもらうのはひとつの方法です。
休職中の社員に会社から連絡をとることを、復帰へのプレッシャーをかけてしまわないか?とためらうこともあると思います。
そこでこうしたやり取りから、社員の回復状況を図ることもでき、復職後の勤務内容なども考えやすくなるでしょう。
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社員のさまざまな健康問題について、頭を悩ませる管理職や人事担当者の方が増えているように思います。会社の業績アップも社員の万全のパフォーマンスがあってのことです。社員がいかんなく能力を発揮するためにも、日頃からメンタル面を含む健康状態に気を配るようにしたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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