「週5日シフトに入ってもらっているパートさんが、おうちの事情で新年度から週3日になる。シフトの調整を考えないといけないが、年休の日数はどうなるんだろう?」(給食調理員 部門長 談)
3月半ば、たくさんのパート社員が働く職場では契約更新の手続きとそれに伴う事務対応で忙しい時期になりました。
週所定労働時間が30時間未満のパートタイマーの年次有給休暇の日数は、その勤務日数(週所定労働日数)に応じて比例付与されるので、契約変更に応じて適切に年休管理を行う必要があります。
そこで今回は、パートの年休管理についてよくご相談いただく次の2点について詳しく確認していきたいと思います。
- パートが年休で1日休むと当然「有給」となるが、いくら払うべきなのか、またその計算根拠は?
- 新年度の契約を更新するにあたって、パートの週の勤務日数を変更した場合、年休をいくら付与するといいのか?
パートの年休に給料をいくら支払わなければいけないか
社員が年次有給休暇を取得する場合、会社から給料が支払われる(有給)ことになります。
パートの1日あたりの所定労働時間は、正社員より短くなることが多いでしょう。そこでパートが年休で丸1日休む場合、給料をいくら支払うべきなのかが問題になります。
会社は年休期間の給料として、次の1)~3)のいずれかを支払わなければならない、と法定されています。会社がいずれをとるかについては、就業規則に定めておくことが必要です。
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額(労使協定で定めた場合)
パートの場合、1)または2)が圧倒的に多く、3)を採用されるケースはあまりみられません。
2)の「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」については、次のように計算することになります。
- 時給による場合は、その時間あたりの賃金にその日の所定労働時間数を乗じた金額
- 日給による場合は、その金額
そこでパートが年休を取得したとき(時給制の場合)には、
- 本人の時給額×その日(年休取得日)の所定労働時間数
によって算出された額を支払うことになります。
なお、ここでの「所定労働時間数」とは、パート本人との労働契約において定めた、働くことを約束した実労働時間のことをいい、残業時間などは含みません。
たとえば、労働契約上の所定労働時間は6時間であるけれど、いつも2時間の残業で8時間働くことが常態になっているパートの場合、上記の計算方法によると、(8時間ではなく)6時間で算定することになります。
労基法上の所定労働時間とは、労働契約や就業規則で定めた時間のことをいい、実態の時間をさすものではないからです。
パートの勤務日数が変わるとき付与する年休日数はどうなる?
所定労働日数が正社員に比べて少ないパートには、正社員とのバランスを取るために、その所定労働日数に応じた日数の年休を比例付与することになっています。
新年度に向けた契約更新で、パートの所定労働日数が変更となることもあるでしょう。年度途中で変更となる場合、年休は基準日において発生するので、当初の年休日数のままと考えることとされています。
問題となるのは次のようなケースです。
たとえば週3日勤務のパートが、新年度の契約更新にあたって週4日勤務に変更となった場合で、本人の勤続年数が3年度目になるとき、次年度の年休は6日になるのでしょうか、それとも9日になるのでしょうか?(下記の図表を参照しながら読んでいただくと、わかりやすいかと思います)
*年休の比例付与(上記の例を図表化)
所定労働日数 | 勤続年数 | ||||||
初年度 | 2年度目 | 3年度目 | 4年度目 | 5年度目 | 6年度目 |
7年度目 以降 |
|
4日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
翌年度の年休が発生する要件には、所定労働日数の8割以上出勤していることが必要です。
一方、発生する年休の日数は、基準日の所定労働日数によることになります。
よって先の例では、所定労働日数を4日として更新するので、付与する年休日数は9日となります。
このようにパートの新年度の年休付与を考えるときには、
- 年休の発生要件は「過去の勤務実績」をみる
- 年休の付与日数は「基準日の所定労働日数」をみる
この2点がポイントとなり、混同しないよう注意が必要です。
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パートは時給制で働くケースが多いと思いますが、勤務しない日にも給料が支払われるという年休のメリットは、とても大きいものがあります。
実際に、「こどもの学校行事に心置きなく出ることができて、とてもありがたい」とパートさんから感謝された、と経営者の方から伺ったことがあります。
ですから年休の完全取得をめざしたいパートが多いのは当然といえますし、そのあたりの認識はパートと正社員のような月給者では異なることでしょう。
そこで会社としては、パートの年休に対して給料をいくら支払わなければいけないか、また年休をどれだけ付与するのかについて、きちんと把握しておくことがとても重要になってきます。
パート社員のモチベーションを維持し、力を合わせて会社を伸ばしていくために、ぜひこの機会にバッチリ確認していただければと思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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