「仕事終わりの打ち合わせって、労働時間にカウントするべきなのかな?でもお菓子をつまみながらのまったりモードだしなあ・・・」
「反省会」「懇談会」「会議」などの名称で、社員たちが職場に居残って議論する、といったことは日常的にあるあるだと思います。
とはいえ労働時間マネジメントを考えるとき、労働時間なの?(←お菓子も食べているし)と判断に迷うこともあるのではないでしょうか。
また、こういった「会議」のあとで懇親会が開かれることもあるでしょうが、これは労働時間になるのか?得意先の接待の場合とは違うのか?・・・考え出すと「沼」にハマってしまいそうです。
そこで今回は、次の2点について詳しく確認していきたいと思います。
- 終業後の打ち合わせやミーティングは労働時間になるのか?
- 接待や宴会をはじめ終業後のいわゆる飲みニケーションは労働時間になるのか?
終業後のミーティングは労働時間?
終業後のミーティングや打合せが残業時間にあたるかどうかは、単に会合の名称によって決まるわけではなく、開催する目的、内容、その他実態に応じて判断する必要があります。
全員参加を建前としていても、終業後のミーティングの実態がお菓子やおつまみをひろげてビールを一杯・・・と、社員同士の親睦を深めるための飲食が目的の場合、これは労働時間となりません。
終業後のミーティングや打合せが労働時間にあたるのは、参加しないことで不利益な取り扱いを受けることが定められていたり、明示又は黙示の業務命令があったときです。
ここでいう「不利益な取り扱い」とは、1)直接的な不利益、2)間接的な不利益の2つがあります。具体的には、次のようになります。
1)直接的な不利益 |
|
2)間接的な不利益 |
|
またこのような「不利益な取り扱い」とは関係なく、形式的には自由参加といいながらも、実質的には強制参加と認められるような場合も労働時間となります。
たとえば、所属長から仕事に関係することだから全員参加するようにといったお達しがあり、所属長自ら出欠の点呼を行い、その出席状況を上層部に報告、また参加しない理由の聞き取りを行っている場合などです。
「プライベートを調整して(ミーティングに)参加したのに残業時間にならないなんて」と社員のモチベーションを落としたり、無用なトラブルを避けるためにも、ミーティングや打ち合わせ、会合の趣旨と目的をあらかじめ明らかにしておくことがポイントです。
飲みニケーションは労働時間?
取引先との接待、終業後の打ち合わせ後にメンバーで懇親会、など仕事の都合上、終業後に宴会へ出席することもあるでしょう。これらの場合はどのように考えるとよいのでしょうか。
企業における接待飲食は仕事のうち、との風潮が一般的にありますし、また会計処理においても社用として交際費による支出も認められていますが、労働時間にカウントされるかどうかは別問題として捉えなければなりません。
会社からの帰り道に飲み屋に立ち寄って仕事の話をする、いわゆる飲みニケーションを図ることは、日本のビジネス習慣としてあるので、接待の飲食や宴会で仕事の話が出たかどうかは判断基準になりません。労働時間になるかどうか、判断のポイントは次の2点です。
- (宴会への出席に)明確な業務命令があること
- (宴会への出席が)仕事において緊急度かつ必要度が高いこと
接待の飲食や宴会などは、この2つの要件を満たさない限り業務とはいえず、原則として労働時間となりません。
たとえば、業務命令によって総務担当者が得意先の通夜(飲食がふるまわれることもある)に出席する場合は、この1)、2)の要件を満たすことになり、労働時間となります。
ですからもちろん、社員同士で行う送別会や忘年会は労働時間になりません。よくご質問をいただくので、余談としてお伝えすると、(送別会や忘年会は)業務との関連性がないということですから、帰り道での事故は、原則として労災保険の通勤災害には該当しないことになります。
では、終業後の打ち合わせ後での懇親会はどうでしょうか。この場合、次のような内容の判決があります。
- 懇親会で仕事の話が出ることはあっても、打合せの業務目的は一応終了している
- たとえこの懇親会が業務の円滑な進行に寄与するものであったとしても、次の者以外は、これに出席しても業務とみることはできない
- 特命によって宴席の準備を命じられた者
- 出席者の送迎にあたる自動車の運転手
以上のことから、原則として業務とはみなされないので、労働時間にカウントされません。
さらにいわゆる2次会に参加した場合については、たとえ1次会が業務と認められるものであっても「(2次会は)業務の延長とは考えられない性質のもの」とされた判決があり、これも労働時間にはなりません。
**
何人かでわいわいやっていると、誰かのちょっとした一言でビジネスのアイデアが生まれることも少なくありません。けれどそれはお酒の場でなければいけないということもないでしょう。
もし、終業後のミーティングや飲みニケーションが「非効率かも?」と少しでも感じるのであれば、見直しのタイミングかもしれません。
大切なのは、社員みんなのアイデアが浮かびやすく、意見交換しやすい環境づくりです。企業の文化に合った、オープンな場づくりを考えたいですね!
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事