「入社日と年休の付与日が異なると管理が大変だ。入社日と年休の付与日を統一することはできないのかな?(;・∀・)」
4月に新入社員が入社してから半年が経過したので、年休が10日発生します。中途入社の人もいると入社日がバラバラなのはよくあることとはいえ、それぞれの年休付与日を管理するのは大変です。
また、あわせて年休の時効にかかわるこのタイミングで担当者として頭を悩ませるのは年休の買い上げについてです。
そこで今回は、担当者のよくあるお悩みである下記の2点について詳しく確認していきたいと思います。
- 年休の基準日をそろえる方法
- 年休の買い上げ
年休の基準日をそろえる方法
法律通りに年休を付与すると、年休の基準日が社員の入社日によってバラバラになるので、管理が大変です。
新入社員の入社日が4月1日であることが多いので、中途入社の場合も合わせて、年休の基準日を4月1日にしたいと思われることも多いのではないでしょうか。こんな場合、繰り上げ方式によるとうまくいきます。
つまり、「入社後6か月で10日発生」という年休の発生要件を会社の判断で緩やかにし、入社半年に満たない場合でも、4月1日に年休を前渡しするという方法です。
入社日の4月1日に5日を前渡し、残りの5日を法定の基準日である10月1日に付与するといった、分割付与もOKです。
この場合、基準日は最初に付与した4月1日になるため、翌年の4月1日に11日付与することになります。
わかりやすいように、就業規則の規定例と合わせて事例を以下のようにあげてみます。
***
【就業規則の規定例】
第○条 会社は、従業員に対し、入社日に次表の通り採用月に応じた年次有給休暇を与える。
入社月 |
4月から 9月 |
10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
採用時 休暇日数 |
10日 | 5日 | 4日 | 3日 | 2日 |
1日 |
0日 |
2 従業員の採用2年目以降において、会社は毎年4月1日に、次表の通り勤続年数に応じた年次有給休暇を与える。
勤続年数 | 2年度目 | 3年度目 | 4年度目 | 5年度目 | 6年度目 |
7年度目 以降 |
休暇日数 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
***
上記の就業規則の規定例をみると、「9月入社と10月入社では、1か月違いで大違いだ」と思われたかもしれません。確かにそういう見方もできます。もし中途採用が多いのであれば、法定の付与によるのが最も公平な方法です。実務上どちらを採用するかは、「割り切り」と「年休管理の事務負担」とのバランスだといえるでしょう。
年休の買い上げについて
年休の買い上げとは、社員の取得できなかった年休の残日数を一定の金額で会社が買い取る、補償的取り扱いのことをいいます。
「年休管理をしていると、あまりに『年休を流す』社員が多いのが気にかかる」
「年次『有給』休暇という名前の通り、年休は給料と同じだから、賃金をもって休暇に代えてあげたい」
とのことから、年休の買い上げが法律に適っているのかどうかについて、コンサルティングのなかでよくご質問をいただきます。
労基法では年休の目的を「社員の心身の疲労をリフレッシュさせること」としているので、年休取得とお金を引き換えにすることは、この見解に反するものとして違法となります。ただし次のような場合は違法になりません。
- 法定日数を超える部分の休暇日数分
- 時効によって消滅した休暇日数分
1)は、法律の最低基準を上回ったその会社オリジナルの休暇なので、労基法の規制が及ぶところではありません。
買い上げる旨を就業規則で定めても構いません。
2)は、そもそも何もしなければ時効で消滅するものなので、買い上げても法律に抵触しません。
違法にはならないとはいえ、たとえば買い上げる金額が高額(1日分の給料よりもずっと高いなど)の場合、普通に年休を取得するよりも金銭的な魅力があるので、「年休を(あえて)取らない」という行動へ、社員を導いてしまいかねません。
そうなると、習慣的になっている長時間労働を見直し、生産性の高い働き方を目指す方向とは逆行することになってしまいます。その点がとても気がかりな点です。
なるべくなら、労働時間を短くして、なおかつ生産性を上げてしっかり利益も獲得していく、という方向にシフトしていきたいですね。
これからの仕事と年休のバランス
最近は、プライベートとバランスをとって仕事をしたいという社員のニーズも強く、「週4勤務正社員(週休3日制)」といった働き方もみられます。
フルタイムに比べると労働時間短いので、基本的にそれに相応する給料となりますが、生産性を高めてフルタイムと同様の働きができるのなら、賞与で還元して年収を大きく減らすことのないような仕組みがとられています。
このような働き方が実現できると、人材採用が難しい時代においても、プライベートの時間でスキルアップを図りたいなど意識の高い人材を確保できるチャンスが高まります。
「理屈は頭で理解しているが、実際にそんな働き方を導入するにはハードルが高い」「それで仕事がはけずに納期に間に合わなかったら大変だ」と懸念されるかもしれません。
そこでその第一歩として、まずは年休の取得率をアップさせることからはじめるのもひとつの方法だと思います。
誰かが休めば、誰かがフォローする必要があります。これを「後進を育てる機会」「無駄な仕事を捨てて効率化を図る機会」「今までのやり方を変える機会」と前向きにとらえることで、会社全体のスキルの底上げにつながります。
以下の過去記事も参考になると思いますので、リンクを貼っておきます。
前向きに取り組んでいただくきっかけになれば、とてもうれしく思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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