「この半年間で欠勤が多かった社員とちゃんと働いている社員が同じ賞与額っていうのは、やっぱりナイよなあ・・・」
公務員の賞与支給日は法律や条例で定められていますが、民間企業ではいつに支給しなければならないなど、ガイドラインがあるわけではありません。
「(賞与自体を)支払うのか支払わないのか」「いつ」「どんな計算方法で」といった賞与の支給要件は、自社独自のルールで決められるものです。
ですが、それゆえに「こんな支給要件でいいのか?」と悩まれる経営者や人事担当者の方は多いようで、特に出勤率についてのご相談をいただきます。
そこで今回は、「出勤率」を賞与の支給要件として設ける場合の注意点について、詳しく確認していきたいと思います。
そもそも出勤率を要件にするのは?
たとえば「算定期間中の出勤率が50%に満たない者には賞与を支給しない」として、出勤率を支給要件にいれるとき。
企業が賞与を支給する理由には、
- 社員の短期間の頑張りに報いるため
- 生活保障のため(住宅ローンの支払いにあてるなど)
- モチベーションアップ
など、さまざまなものがあると思いますが、これらをみても一定以上の出勤率を支給要件にするのは、頷ける気がしますよね。
ですから病気や私用などによる欠勤によって、出勤率が低い社員に対して「不支給」とすることは問題となりません。
けれど、年休や育児休業など法律で休暇・休業の取得が保障されているものについては、出勤率の要件によって、その権利行使を抑制することになりかねません。権利を実質的に失わせることになる場合はNGと判断されるので、注意が必要です。
出勤率を査定に反映させるのは?
では出勤率を査定に反映させるのはどうでしょうか?
たとえば「出勤率が80%未満の場合、他の査定が良かったとしても5段階評価のAA、A、B、C、Dのうち、AAとAはつかない」とするとき。
ポイントは、社員の受ける不利益の程度です。無用なトラブルを避けるため、慎重に検討しましょう。
事情を総合的に判断する必要があり、一概には言えないのですが、次のような点がポイントになるかと思います。
- 社員の年間総収入に占める賞与のウェート(つまり、評価の不利益の程度が過度にならないか?)
- 年休や育休等を含めた出勤率なのか(つまり、年休や産休・育休をとれば明らかに出勤率の数値に影響しないか?)
この例でいえば、出勤率80%未満の社員が受ける不利益の程度は、査定でAAとAの上位2段階の評価を受けないことです。他の査定が良ければ標準的なB評価を受ける可能性もあり、賞与が一切支給されないというわけでもありませんから、全くの無効とはならないでしょう。
年休、育休等による休業についても、評価の不利益の程度がそれほど大きくない場合は、査定に入れても有効となる可能性が高いと考えられます。
支給要件を設定するときの重要ポイント
賞与の支給要件に出勤率を設けるときの注意点を見てきましたが、そもそも支給要件を考えるときに忘れてはならないのが、「限られた賞与原資をどのように分ければ社員のやる気を引き出すことができるのか?」という視点です。
たとえば、コンサルティングのなかで賞与の出し方を伺うと、「基本給×〇か月」とされている企業さんはとても多いのですが、そんな企業さんの悩みが、「頑張っている若手社員にもっと報いてあげたい」であったりするのです。
基本給をベースにすると、あまりパフォーマンスを発揮していなくても、一般的にはベテラン社員の方が高くなってしまいますよね。
そんなときこそ、頑張っている若手社員に報いる賞与の出し方を考えてみるといいと思います。
「賞与は基本給×〇か月でなければならない」というのは思い込みです。「どんな計算方法で支払うのか」は会社ごとに決めれば良いことだからです。たとえば、
- 生産性を上げる働き方(残業時間が前年比〇%減、チームで成果を上げることに貢献した、など)
- 提案件数(業務の改善案、新商品の企画案、など)
- チャレンジの難易度(新規ルートの開拓、コスト〇%削減、など)
といったことを支給要件の指標に取り入れてみるのもいいでしょう。
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とはいえ、「激変緩和のため、ある程度の年功的な要素も残したい」との場合は、年功色が強くならないように上限額を決めるなどして配慮しながら、上記のような支給要件と組み合わせるのもひとつの方法です(賞与原資のうち40%は年功による、など)。
柔軟な発想で支給要件を考えてみることが、社員のやる気を引きだす仕組みづくりのポイントだと思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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