「男性社員を採用したいのに、売り手市場で給料が見合わないのか応募がなくて困っています。できれば30代までの人がいいのに・・・」
コンサルティングでこんなお話を伺いました。退職者の補充を行うべく、前任者が「30代男性社員」であったので、後任者も同世代の男性を採用したいとのことでした。
同じようなことを複数の企業でお聞きするのですが、本当に30代の男性しかこなせない仕事内容なのでしょうか。担当する仕事の内容をよくよく見直してみると、実は、年齢や男女の性別関係なくできる仕事だと判明するケースもよくあるからです。
「この仕事は30代男性社員が担当する仕事だ」というのは、もしかすると単なる思い込みだということも多いのかもしれません。
そこで今回は、ぜひ欲しいと思っている若手の男性社員(でも採用難)は本当に必要なのか?について改めて考えてみたいと思います。
男女を区別して採用予定人数を決めてもよいのか
募集や採用において、男女のどちらかを優遇せずに、平等にチャンスを与えなければならないと法律で決められています。男女のいずれかを優先しているとされる具体例が、厚生労働省の指針で次のように掲げられています。
- 採用選考に当たって、採用の基準を満たす者の中から男女のいずれかを優先して採用すること
- 男女別の採用予定人数を設定し、これを明示して、募集すること。又は、設定した人数に従って採用すること
- 男女のいずれかについて採用する最低の人数を設定して募集すること
- 男性の選考を終了した後で女性を選考すること
(「労働者に対する性別を理由 とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」より抜粋)
よって男女別に採用する人数を決めて、採用選考することは認められません。ただし女性を優先的に採用するにあたって、ポジティブアクションとして実施する場合は構いません。
ポジティブアクションとは、管理職に女性がほとんどいないなど、社員の間で男女の差がある場合、その差を解消しようと個々の企業が行う自主的かつ積極的な取組みのことです。
男性にしかできない仕事なのか
法律の趣旨もよく理解しているが、どうしても男性社員が欲しい場合はどうすればいいのか、と思われたかもしれません。
基本的に仕事には男性も女性もない、と思います。
けれど現実的には重いものを遠くまで運ぶなど、男性の方が向いているような仕事もあるでしょう。
こんな場合にも無理やり女性を採用しなければならない、ということを言いたいのではなくて、「それは本当に男性にしかできない仕事なのか?」と思い込みを見直してみることを、ぜひお勧めしてみたいのです。
見直してみた結果、たとえば
【思い込み】
・30代男性社員にしかできない仕事
↓
【見直し後】
・女性パート社員2名体制+今いるリーダーの最終チェック
といった具合に対応できるかもしれません。
実は不要であった作業が省けて生産性があがる機会になりますし、人件費の削減にもつながる可能性があります。そして何より募集や採用の間口が広がるので、有効求人倍率が高いレベルで推移する時代において人材獲得難を乗り切るきっかけになります。
たとえば早朝の仕事がネックとなって応募がないなら、その時間帯だけ学生アルバイトにお願いしてみるのもひとつの手です。
学生は、学業やサークル・部活動に忙しいなか自分の時間を十分に取りたいので、時給の高い早朝アルバイトを希望する傾向があるからです。
人材難を乗り切る会社は良い流れに乗っている
実際に仕事内容を見直してみて、男女のこだわりなく募集採用を行う会社では、好循環に乗っている傾向にあるようです。たとえば、次のような流れです。
- 応募結果をみると女性の応募が多かった(しかも優秀だった)。
- せっかく採用するのだから辞めないで活躍してほしい。
- そのため慣例になっていた仕事内容や流れを見直し、働き方を柔軟に考えた。
- 女性社員が不慣れなところは丁寧にフォローを行った。
- フォローをすることで職場全体の仕事への理解度が深まった。
- ムリムダが省けて女性が働きやすいだけでなく、みんなが働きやすい職場ができた。
- 「辞めたくない会社」として定着率がアップした。
- 知らず知らずのうちに協力体制ができ、業績があがった。
思い込みを取り払うだけで、社員の仕事がやりやすくなり、業績アップにつながるなら、やってみない手はないと思いませんか?
まずは、「若手の男性社員を採用したい理由は?」「(男性社員だけを採用する)本当にその必要があるのか?」と、従来の前提を疑ってみることからです。
かつては必要であった理由も、時代の流れ、環境の変化(省力機器の普及、手順の簡略化など)から、必ずしも必要でなくなっているかもしれません。
私たちはともすれば、慣れ親しんだやり方にこだわってしまいがちです。ですが、柔軟にやり方を変えていくことにも、ためらわず挑戦していきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事