社員の給料を考えるうえで年俸制や歩合制を導入したい、とのご相談をいただくことがあります。
年俸制や歩合制といえば「人件費が管理しやすい」「本人の成績や会社の業績に応じた支払い」などの点にメリットがある、と思われるからでしょう。
もちろんメリットだけでなく、デメリットもあります。
そのため、デメリットを上回るメリットがあるか、自社の現場の実情にあっているか、今いる社員のモチベーションはあがるのか、などを考えたうえで導入について判断することがポイントです。
そこで今回は、年俸制と歩合制のメリットとデメリットについて詳しく確認していきたいと思います。
年俸制のメリット・デメリット
年俸制は1年単位で、給料の額を決定する形態のことです。
給料は毎月1回以上一定の期日を定めて支払わなければならない、と法律で決まっているので、実際には年俸額を分割して毎月支払います。
上司との交渉で毎年の賃金額が変動しうる、という成果主義的な面があります。
よって業績評価の基準をクリアにするなど、公正な運用が必要です。
なぜなら、「評価はえこひいき、権利濫用だ!」とトラブルになる可能性があるからです。
そこまでには発展しなくても、納得性がなければやる気をなくしてしまい、アウトプットの質・量ともに下がることで会社の業績へダメージを与えてしまいます。
「年俸制では残業代を払わなくてもいいのでは?」との認識もままあるようですが、これは誤解です。原則1日8時間・週40時間を超える労働には、管理監督者を除いて25%の残業代の支払いが義務づけられています。年俸制であっても、これは基本的に同じです。
ただし下記の条件をクリアすれば、年俸にあらかじめ残業代を含めることができます。
- 年俸に残業代が含まれていることが労働契約書に明記されている
- 残業代部分と基本給部分を区別して支払われている
- 実際の残業時間で計算した残業代を下回っていない
これらの条件をクリアすることで「人件費をスムーズに管理できる」メリットがあります。
歩合制のメリット・デメリット
歩合給は出来高や業績によって支給される給料です。
「労働時間に応じ一定額の賃金を保障する」ことが法律で義務づけられているので、売り上げた分だけ給料を支払う、といったいわゆる「完全」歩合給は認められていません。
やればやった分だけ給料にオンされる仕組みは、一つひとつの案件に対する意識が高くなります。営業が一件決まればダイレクトに給料がアップするので、がんばり甲斐があって熱心に取り組むようになるのです。生産性の向上が期待できます。
デメリットとしては、短期的な視点での行動になりがちなことが一番に挙げられます。
たとえば継続的に売上げを上げるには、リピーターのお客さまへの日頃の接客態度や、見込み客へのアプローチが大切です。けれど売上げ成績によって給料が決まってしまうので、種をまくような営業活動を避けたがる雰囲気になる傾向があります。また社内で顧客を奪い合ったり、チームプレイで仕事をするよりは自分さえよければいい、という風潮も生みがちです。
社員の行動パターンとやる気が変わる給料の出し方
年俸制と歩合制、それぞれのメリットとデメリットを見てきましたが、給料を出すときのコンセプトとして、「人を育てる」という視点は欠かせません。中長期的な会社の伸びにかかってくるからです。
年俸制では業績評価の基準を明らかにしなければ、社員のやる気を削いでしまいます。
そこで社員を育てて会社を伸ばしていくには、日頃の仕事ぶりや成長を会社はどういった観点で評価するのか、方針を明確にして「評価要素」「評価項目」などを就業規則で定めておくといいでしょう。
歩合制では自分の歩合を稼ぐ時間やエネルギーを、他の人へ協力するために割くような、「人を育てる」視点を持ってもらうのは難しくなってしまいます。
そこで給料に占める歩合給の比率(多くを占めると会社にとってプラスに働くか?)や、会社が評価したい項目(売上げや利益への貢献の仕方、債権回収など)をしっかりと考えて制度設計することが大切です。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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