社員のことを考えて社内制度を考えた。就業規則にもきちんと明記した。もちろん社員説明会も開催した。でも社員の顔はどこか冷めているようだ。社内制度を利用する社員も出てこないまま月日が過ぎて・・・
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せっかく就業規則を作成したにも関わらず、ちょっと残念なことになってしまっています。「就業規則なんて作らなければよかった・・・」いえいえ、肩を落とさずに聞いてください。
それは、就業規則自体がいけないのではなくて、就業規則作成の本当の意図が社員に伝わっていないだけかもしれません。
実は、就業規則を活用して会社と社員の目標をひとつにして業績を伸ばしている会社は、就業規則が本当に意味するところをうまく伝えているのです。では、どのように伝えるといいのでしょうか?
そこで今回は、就業規則で社員へ本当に伝えたいことを伝えるコツについて、詳しく確認していきたいと思います。
就業規則を説明するときのポイント
では、具体的にはどのように社員へ伝えればいいのでしょうか。
本来であれば、会社の実情によって個別アドバイスをすべきところですが、王道パターンをお伝えしたいと思います。
- 各章におけるポイント(結論)から話す(制度構築のポイント、社長が何を思い重要視しているか)
- その理由を説明する(なぜなら○○○だから)
- 具体的な事例を挙げる(たとえばこんなときはこうしてほしい)
- もう一度結論を話す(だから○○○なのです)
たとえば就業規則に「年次有給休暇は半日単位で取得することができ、半日単位の取得は1年度にあたり5日を限度とする」という一文がある場合、次のような説明がよく見受けられます。
「年次有給休暇は半日単位で取得できます。上限は5回までです。」
社員へ誤解を与えないよう、就業規則の内容を隅から隅まで漏れなく、正しく伝えようとすると、説明が事務的になり、社員に理解できるように伝えられていない、となりがちです。けれど内容を社員の腹に落としてもらい、実際に行動を起こしていってもらうことが大切で、本来の意図するところです。
そこで、「社員が動く就業規則」を採用している会社では、説明は次のようにします。
- 半日単位で年休を取れることにした。パフォーマンスを最大限に発揮してもらうため、柔軟に対応できるように考えている。ただし取得上限は5回までとしたい。
- なぜなら、仕事に区切りをつける意味でもちょっとリフレッシュしたい時、通院、家族の付添いなどにあて、家庭との両立をうまく図ってほしいからだ。
- うちはチーム単位で仕事を行っている。あまり頻繁に細切れに休んでしまうと逆に効率が悪くなって、パフォーマンスが落ちる懸念もある。チームで融通をつけて活用してほしい。
- だから制度導入当初は上限回数を設けたが、家族を大切にしながら自らもリフレッシュしてしっかり仕事に集中するため、半日休暇を積極的に活用してほしい。
就業規則の効力は周知してこそ
作成した就業規則は常時見やすい場所に掲示するか、備え付ける等の方法で社員に周知しなければなりません。
これを怠った就業規則は無効と判断されます。また、単に労働基準監督署へ届出しただけでは就業規則の効力は発生しません。
「先代が就業規則を社員に見せたがらなかったので、社長の机の引き出しにずっと仕舞ったままです」とのお話を伺うことがありますが、これでは意味がありません。とても勿体ないです。
就業規則の周知は必ず怠らないようにしてくださいね。
「法改正に対応できていなくて、不備があるので社員に見せられない」ということでしたら、外部の専門家(社会保険労務士)に力を借りて、すぐに対処されることをお勧めします。
「社長が就業規則を見直して(作成して)公開してくれたので、自分たちのことをちゃんと考えてくれているんだと安心した」、などといった社員さんの声を聞くことは、実際にたくさんあります。
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繰り返しになりますが、就業規則は作成して終わり、ではなく社員に実際の行動に移してもらうことが大切です。
ぶっつけ本番で社員説明会を開催するのではなくて、シナリオを事前に考えるかどうかで、結果が大きく変わります。
経営者が社員に伝えたい考え方、価値観、思いなどを整理して、説明会に臨んでいただければと思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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