賞与による年収管理をうまく運用するコツ

オフィスの木製テーブルに飾られたガラスの花びん。チューリップとスプレーマムが活けられている。傍らに積まれた本。

 年俸制では支給する額が最初から決まっているから、賞与で年収調整するのが難しい。会社の経営状況が悪いときに、賞与で調整しづらいのはデメリットと感じる。(飲食店経営オーナー 談)

 

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年収は月給と賞与によって決まり、年収に占める賞与のボリュームは大きいもの。社員にできるだけ還元したいという思いはありながらも、会社としては業績についても考えなければなりません

 

実は、賞与には会社の業績をみながら総額人件費の管理を行うとともに、社員の年収も管理する機能があります(←年俸制の場合も例外ではありません)。

 

そこで今回は、年俸制における場合も含めて、賞与と年収管理の関係について詳しく確認していきたいと思います。

賞与と年収管理の関係

オフィスのデスクに置かれたノートパソコン、マグカップ、スマートフォン。

実は、賞与と年収管理の関係に着目することで、賃金制度の現状課題を見つけることもできます。社員の年収は、簡単にいうと以下のような構成になっています。

 

 年収=【月給】×12+【夏・冬の賞与】+【決算賞与】

 

よって、年収を調整する役割としては、大きく分けて次の3点を挙げることができます。

  1. 月給の昇給
  2. 賞与
  3. 決算賞与(一時金)

先にもお伝えしたように、社員の年収に占める賞与のボリュームは大きいため、賞与や一時金の支払い額を会社の業績によって大幅に変動させるとすれば、総額人件費をとてもスムーズに管理できることがわかります。けれど、これまで多くの企業では、年功を重視して賃金を決定してきたので、社員の年収は会社の業績と連動せずに、成り行きで決まってしまうケースがみられました。

 

その反省から人件費をスムーズに管理するために、年俸制の導入を検討する企業も出てきました。そこで検討のプロセスにおいて、冒頭のような「いや、でも年俸制にすると賞与で年収管理できないのでは・・・?」との疑問にぶつかることになります。

 

年俸制は1年単位で、給料の額を決定する形態をとります。給料は毎月1回以上一定の期日を定めて支払わなければならない、と法律で決まっているので、実際には年俸額を分割して毎月支払うことから、このような疑問が生じるのでしょう。年俸制においては、年収を決めてから月給や賞与に振り分けるしかない、との思い込みがあるからです。

年俸制では賞与で年収管理できない?

オフィスのデスクでスマホをチェックしながらメモを取るビジネスパーソン。

年俸制といえば、年収(年俸)を評価によって決定し、それをたとえば16で割り、12か月分の月給と残りの4か月分を夏・冬の賞与に2か月ずつ振り分けるような方法を思い浮かべられるのではないでしょうか。

 

もちろんこの方法は間違いではありません。ただしこのやり方だけが年俸制ではないのです。

 

先のようなやり方をとると、初年度の評価が良ければ、次年度の年収(年俸)が上がることになるので、当年の会社の業績とうまく連動することができません。

 

そこで、「月給(基本年俸)+人事評価の格差が大きくつく賞与制度」をもって年俸制とすることもあります。

 

そうすれば、当年の会社の業績と個人の人事評価に連動して、社員の年収管理を行いやすくなります(いわゆる「日本型年俸制」と呼ばれるスタイルです)。このスタイルの年俸制の特徴を簡単に言うと、次の3点になります。

  1. 基本年俸(月給×12か月)+人事評価の格差が大きくつく賞与
  2. 月給部分も人事評価いかんでアップダウンの可能性がある
  3. 人事評価によって月給部分に定期昇給がある

これによると、基本年俸(月給部分)も人事評価によってアップダウンし、賞与で大きく格差がつくので、年俸制のインパクトを残しつつも、賞与をうまく使って年収を管理することができます。

賞与の出し方で賃金制度の課題がわかる

フリーアドレスのオフィスのデスク。長テーブルに観葉植物が飾られている。めいめいスマートフォンやノートパソコンを広げて仕事するビジネスパーソン。

人事制度(人事評価と賃金制度)のコンサルティングをしていると、資格等級による人事評価を実施している企業であっても、人事評価よりも昇給に重きを置いて年収格差をつけているケースがとても多いことに気付きます。

 

この場合、何が問題なのかというと、たとえば2等級の人が良い評価をとり、3等級の人が悪い評価をとったとすると、たとえ評価が悪くても「3等級の人のほうが上の等級なのに、賞与で金額がより多くないのはいかがなものか」という考え方で賞与の支給が行われることになります。

 

すると、年収に占める賞与の割合が大きいため、良い評価を取った人の年収が低く、悪い評価の人の年収が高くなってしまうという、おかしな事態が発生します。

 

そもそも人事評価を実施しているのは、会社に貢献することで良い評価となった人に対して、報酬で報いたいという思いからだと思います。評価が悪い人の年収を高くしてあげよう、という意図ではなかったはずです。賞与で年収管理がうまくできていない一例といえるでしょう。

 

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賞与と年収管理の関係についてみてきましたが、ここにフォーカスすることで、現状の賃金制度のどこに問題があるかを見つけることもできます。

 

この冬のボーナス支給を機会に、年収と人事評価の得点を見比べてみて逆転現象が起きていないかなど、賞与による年収管理がうまくいっているかどうか、確認していただければと思います。

白のニットの上に置かれたパンケーキのお皿。ブルーベリーをあしらって。白のチューリップたち。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。花びんに活けられた真っ赤なバラ。白の置時計。
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。談笑するビジネススーツ姿の男女。

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