うちの部の残業が全然減らない。人事部から警告がくるし、たしかに残業代も電気代もバカにならないよなあ。・・・残業する社員にはペナルティーを与える、ということにすれば残業しなくなるかな?
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残業削減に頭を悩ます部長さんです。ビジネスを行う上でコスト感覚は大事とはいえ、それが強すぎると、手早く問題解決ができる手段を求めて「残業削減に効く特効薬があるはず」と考えてしまいがち。
年末の納期など、期間限定で残業が続くことはもちろんあるでしょう。ですが、それが恒常的になっているのはどうでしょうか?
「残業禁止」やそれに伴う「ペナルティー」によって、一瞬にして魔法のように解決する問題ではないかもしれません。
そこで今回は、社員が残業を手放すのに効果的な残業削減の取り組みについて詳しく確認していきたいと思います。
残業が減らないA社の悩み
A社では、残業は所属長に事前申請することによって、所属長の命令のもとで行っています。社員が規定の用紙で申請して、所属長の許可も書類のやりとりで運用しています。
すると、社員が申請したときに、所属長が外出や接客などで不在の場合、所属長が決裁して許可書類をその社員に手渡すまで手間がかかってしまっています。
そのためどうしても事後申請になりがちで、A社が定める月々の目標値の残業時間上限30時間をオーバーしてしまうことも、たびたびあります。はやく何らかの対処を行わなければ、と危機感を持っています。
その対応策として、許可がない残業は一切認めず、許可がなく残業した場合や上限時間を守れなかった場合に本人と所属長を懲戒処分にすることを就業規則へ規定化してはどうか?、ただそれだと厳しすぎるだろうか・・・・と、A社の人事担当者の頭を悩ませます。
毎晩遅くまで煌々と明かりが灯るオフィス・・・残業時間がやたらとかさむ企業では、同じような悩みがあるかもしれません。
ペナルティーは根治療法になるか
コスト管理や社員の健康管理面から言えば、残業時間の上限を30時間に設定することは好ましいですし、正しいことに間違いはありません。
けれど実際のところ、上限30時間では難しいこともあるかもしれません。「長時間労働はいけないことだ」→「残業をやめよう」→「取引先からの要望に応えられない」→「業績が下がってしまった」では、会社の存続が危うくなってしまうからです。
また、社員が残業することに罪悪感を感じて、残業の実態を隠蔽するなど、かえってあまり良いとは言えない習慣をつくってしまうかもしれません。
さらに、懲戒の対象となるのも疑問があります。前述のように納期がひっ迫して残業することもあるでしょうし、新人の頃などは仕事へがむしゃらに打ち込むことで、成長がグッと加速することもあるからです。
つまり問題なのは、残業する行為なのではなくて、残業を「恒常的に行ってしまう」ことにあります。恒常的な残業が発生する仕事のさせ方に問題があり、懲戒規定を設けることで解決するものではありません。
残業の削減は管理職にかかっている
残業を削減しながらも同時に利益を確保するには、管理職がメンバーと向き合い、一人ひとりを丁寧に指導・マネジメントしていくことが大切です。
単に懲戒規定を設けただけでは、目先の責任回避だとしてメンバーのやる気を削いでしまうおそれもあります。
「できる人に仕事が偏っていないか」「優先順位をたてず無計画に仕事していないか」「チームで仕事が共有できているか」など、メンバーとコミュニケーションをとって残業の状況把握を行うことが何より現実的な解決につながります。
前述のA社では残業の事前申請制が形骸化していることが、そもそもの悩みの発端でした。
制度の有効性は運用ルールを実践することにかかっていますから、無理のない運用が継続のコツです。たとえば、「残業が30分から1時間を超える場合に事前申請させる」や、「残業は原則19:00まで、これを超過する場合は事前申請させる」などと考えることもできます。
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残業削減の対応にすぐに効く特効薬はありません。前述のように懲戒規定の設置など、強硬策を試みても、効果は一時的なものですぐにリバウンドしてしまうでしょう。
対症療法的なものであって、根本的な解決にはつながらないからです。「これさえ飲めば、すぐに効く!」ものは、一時的な効果で終わりがち・・・大切なのは積み重ねです。
社員それぞれの仕事の取り組み方(どんな特性をもっているのか、何が得意で何が不得手なのか?など)をみながら、コツコツ腰を据えて取り組んでいきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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