「年休を取りたいけど、申請期限を過ぎてしまった。今日言って明日休むのはマズイよなあ・・・(;´∀`)」
昔、「日本を休もう」というCMがありましたが、あれから30年近くたった今も世間的にうまく休めるようになった、とはまだまだいえない状況なのかもしれません。
休まない(休めない)理由は様々かもしれませんが「年休取得のルールがない」ということも、実は大いに影響してきます。
ルールがないから遠慮して休めない(遠慮しない人だけが休めてしまう)、という事態を招きがちですし、冒頭の例のようにルールを硬直的に取り扱うと法律的な問題が生じます。
そこで今回は、年休取得のルールの作り方とその運用について詳しく確認していきたいと思います。
年休をとってもいいかの判断基準とは
たとえば「年休は休みたい日の3日前までに申請すること」というルールにしているが、当日の朝に休みたいとの電話。
ルールの申請期限を過ぎているから、という理由だけでこれを認めない場合、法的に問題アリのケースがあります。
というのも年休について、会社には年休取得を拒否する権利(時季変更権)がありますが、これは「社員が申請する時季に年休を取得されると仕事がいつものようにうまく回らない場合で、かつ会社が時季変更権の行使をしない限り、年休を与えなければならない」ということだからです。
つまり、社員が行った年休申請がルールの期限を過ぎているかどうかによって判断してはダメで、あくまでその日休むことが事業の正常な運営を妨げるかどうかで判断しなければならないということです。
妨げる場合には時季変更権を行使でき、そうでないときは年休を与えなければならない、というのが法律の趣旨です。
判断するには相応の準備と時間の余裕がいる
前述の例に戻ると、ルールの期限を過ぎて当日の朝に申請があった場合、会社としては
- 同じ日に何人の社員から年休申請があるか(要員は確保できているか)
- 休む当人の当日の予定に対外的な仕事(取引先との打合せなど)はないか
- 休む当人の当日の予定に欠務が許されない仕事(機器の監視など)はないか
- 2.や3.の場合、代替要員の確保ができるか
などを検討して、いつも通り仕事を正常にこなすことができるかどうかを判断しなければならないということです。
前記1から4の、これだけの判断を行うには、相応の時間的な余裕が必要になりますよね。
申請期限のルールがなければ、当日の朝に申請があった場合など仕事をうまく回せるかの判断を常にギリギリの状態で行わなければなりません。
そんなバタバタの状況を目の当たりにして「迷惑をかけるから休めない」と遠慮してしまう人が出てくるかもしれませんし、そんなことは我関せず、とった人ばかりが休めることになって不満を持つ人も出てくるかもしれません。
ルールの本当の意味を共有できれば休みやすい
申請期限のルールを設ける意義は、代替要員の確保や業務の引き継ぎ、そしてそれらを総合的に考えて年休取得の可否を判断するための時間的余裕を持つことにあります。
このようにルールを設ける理由を社内で共有できると、他の人に迷惑をかける心配も払しょくされ、また業務もストップすることもなく、みんなが休みやすくなります。
ルールを設ける理由とそれに伴う社員のメリットを、就業規則作成(もしくは見直し)にかかる説明会で伝えることができるといいですね。
なお、実務的に申請期限のルールについては、「突発的な病気やその他やむを得ない緊急事態を除いては原則として○日前までに申請する」との旨を就業規則へ定めておくといいと思います。
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社員を厳しく縛るために存在するのがルールではありません。ルールというのは、その組織(会社)に属する働き手がより快適に、かつ効率よく、質の高い仕事を生み出すために、組織全体で守るべき約束事のことです。
ルールが意図する真の意味をみんなが理解して、それぞれが気持ちよく能力を発揮できる職場環境をつくっていきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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