チームの仕事をこなすのにどれだけの人数が必要なのか、実はわかっていない。子育て中のメンバーもいるので、急な休みの場合でもみんなでフォローできるようにしたい。(新任の若手チームリーダー談)
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仕事をみんなで把握して、お休みや時短のメンバーがいても、残りのメンバーで主体的に仕事をこなそうとするチームは理想的ですね。では、具体的にはどうしていくと、そんなチームが実現するのでしょうか?
そこで今回は、理想的なチームづくりのポイントとなる次の3点について確認していきましょう。
- チームの仕事量を把握する
- かかる労働時間から必要な人数を割り出す
- IT化・外注化・パート・アルバイトを検討する
チームの仕事量を把握する
冒頭の質問で「チーム全体の仕事をこなすのに、何人必要なのかわからない」とありましたがが、この問題意識はとても大切です。
これを明らかにするには、まずチーム全体の業務量を把握することが必要です。いくら財務の数字上から適正な人件費や要員を算出しても、会社を伸ばすために必要な業務のすべてをこなすことができなければ支障をきたすからです(財務面と発生する業務量のバランスが大切です!)。
そこで、チームが現在抱えているタスクの棚卸しをやってみましょう。
事業部門、管理部門ともに有効なアプローチなのですが、わかりやすくお伝えするためにチームが担当する仕事を「オフィスワーク・管理部門(総務人事)」としてみましょう。
普段チームで行っている仕事を思い出しながら、書き出していただきたいのですが、以下のマトリクスを参考にしてみてください。
定 型 |
非定型 | |
毎月発生 | ||
毎月発生しない |
たとえば大分類の項目を挙げてみると
定 型 |
非定型 | |
毎月発生 | ・給料計算 | ・傷病手当金や労災申請など社会保険手続き |
毎月発生しない | ・年末調整 |
・採用活動 ・社員研修 |
などが考えられます。
実際には給料計算ひとつをとっても、いろいろなタスクがあると思います(たとえば社員ごとのタイムカードのチェック、残業時間の集計表作成など)ので、中分類、小分類とブレイクダウンして書き出してみましょう。「本当に必要なタスクに絞ってやっているのか?」をチェックすることが目的です。「昔は必要だったが、今となってはやる意味がない」といったタスクが発見されるかもしれません。
かかる労働時間から必要な人数を割り出す
先のマトリクスで、年間ベースで発生するチーム全体のタスクを把握できたでしょうか?
そこで業績の伸びにつながらないタスクが見つかれば、「やめると決める」ことが大切です。やらないことを決めない限り、仕事はどんどん膨れ上がり、それに比例して労働時間が長くなっていきます。
そうすると、チームの業務量に対して本当に必要な要員数がわからなくなってしまいます。なぜならチームに必要な人数は、仕事にかかる労働時間から算出するからです。具体的には下記のように計算します。
最も良いやり方で仕事をしたときの総労働時間(A)
――――――――――――――――――――――――
1人あたり労働時間(残業時間含む)(B)
この式に基づいて、試しに計算してみましょう。
毎月発生する給料計算や社会保険手続き、季節によって発生する採用業務、年に1度の年末調整etc・・・年間ベースのタスクとそれにかかる時間を書き出してみると11,370時間になりました(A)。
この会社の所定労働時間は8時間、年間の営業日(労働日)は245日です。このチームの1人あたりの年間残業時間が120時間だとすると、Bは8時間×245日+120時間=2,080時間と求められます。
A/Bを計算すると5.47人となりますから、チーム全体のタスクに対して5人プラスアルファが必要ということになります。
このプラスアルファ部分については、タスクのスリム化が必要かもしれませんし、どうしてもやる必要があるなら、後段でお伝えするIT化・外注化・パート・アルバイトを検討するとよいでしょう。
分子であるAは業務改善を行って、スリム化した仕事にかかる労働時間であることがポイントです。そうでなければ「本来の適正な人員数」よりも多い数をはじき出してしまいます。また分母であるBについても、残業時間を含めた無理のない労働時間であることがポイントです。さもなければやり残しの業務が発生するおそれがあるからです。
このように、会社の伸びにつながる(管理部門であれば「下支えする」)必要な仕事に対して適正な人員を検討するうえでも、労働時間マネジメントはとても大切です。特にBは個人のスキルや処理能力にかかってくるので、過去記事でお伝えするように「残業の削減は管理職のマネジメントにかかっている」のです。
IT化・外注化・パート・アルバイトを検討する
仕事の棚卸し(タスクのスリム化)、かかる時間から必要な人数を割り出しました。
次はタスクの質(難易度、社内でやるべきものか)を見極めるために、もう一度マトリクスに戻りたいと思います。
青色のゾーンは発生頻度に差はありますが、やることが決まった定型タイプのものですから、「難易度は高くないが、業務量に対応できる要員を確保しなければならない」タスクと言えます。
もし社内で内製化するよりもコストが削減できるのであれば、外注化は検討に値します。
定 型 |
非定型 | |
毎月発生 | ||
毎月発生しない |
業務改善によってスリム化したタスクであれば、外注化のコストも抑えることができるでしょう。また、ソフトの導入などIT化を考えてみるのもひとつの方法です。習熟に時間を要しないタスクには、パート・アルバイトに任せてみることを視野に入れると、仕事の流れがよりスムーズにいく可能性もあります。
まとめ
- チームの仕事量を把握する
- かかる労働時間から必要な人数を割り出す
- IT化・外注化・パート・アルバイトの検討
これらを総合的に検討することで、現状よりもチームに余裕を生み出すことができれば、はじめの一歩として◎です。
このプロセスを途中であきらめてしまうと、たちまち仕事はメタボ化、労働時間はズルズルと長くなり「みんながいっぱい、いっぱいのチーム」になってしまいます。
継続は力なり、を念頭にこのプロセスをコツコツ継続することで「1人休んでも3人で回る4人体制チーム」を目指したいですね!
そこでチーム全体の仕事の棚卸し、かかる時間をワンシートで把握できるシートを下記にアップしています。
ダウンロードして、チームの仕事の進め方、分担などを見直す機会に活用いただけるとうれしく思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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