思っていたような仕事じゃなかった、と新人があっさり辞めてしまう。入社前にインターンシップで職場の雰囲気やうちの仕事内容を知ってもらってはどうだろう。見学とか体験的なものにして、アルバイト程度の日当を支払おう。・・・もし学生さんがケガしたら労災保険の対象になるのかな?(メーカー勤務 採用担当者 談)
**
学生に職場体験の機会を提供する制度、インターンシップをまさにいま、実施中の企業もあるかもしれません。
とはいえ、冒頭のような気がかりな点があって実施をためらうケースも多いようです。そこで今回は、インターンシップ実施で気をつけたい下記の3点について詳しく確認していきたいと思います。
- インターンシップ中のケガは労災になる?
- インターンシップでミスマッチを防ぎたいが実施する余裕がない
- そもそもインターンシップ生が集まるかどうか不安
インターンシップ中のケガは労災になる?
インターンシップ生が労災保険の適用対象となるかは、労基法上の「労働者」に該当するかどうかで決まります。ここで言う労働者とは、「職業の種類を問わず、事業等に使用される者で、賃金を支払われる者」のことです。
インターンシップ生の実習内容が見学や体験的なものであり、それに対する手当も実費弁償的なものであれば、労働者には該当しません。
一方、他の社員と同じように現場の指揮命令を受けて作業を行い、その対価としての手当を受けているような場合は、労働者と判断されます。
冒頭の相談内容では、インターンシップ生には見学・体験実習の程度でアルバイトくらいの日当を支給、ということでした。
実習内容が単なる見学で、日当も交通費や昼食代の実費程度の金額であれば、労働者と判断されません。したがって労災保険の適用対象となりませんが、企業には安全配慮義務があります。そこで万一の事故に備えて、賠償責任保険等への加入を検討することをお勧めします。
一方、インターンシップ生が他のアルバイトや社員と同じ作業を現場の指揮命令を受けて行い、対価としてアルバイト賃金と同程度の日当を受けるのであれば、労働者と判断されます。よって労災保険が適用され、保険給付を受けることができます。この場合、労働保険料の算定・納付には、インターンシップ生の日当も賃金総額に含めなければならないのでお忘れなく!
ミスマッチを防ぎたいが実施の余裕がない
仕事の現場をリアルに体感できるインターンシップは、企業と学生の間で相互理解を深めることができるので、入社後のミスマッチ予防策として有効です。
とはいえ、人員の余裕がない企業では、そのときの仕事の受注量いかんでは忙しすぎて、実施できない場合もあると思います。
実は、入社後のミスマッチを予防する方法は、インターンシップの実施だけではありません。内定者フォローや試行雇用契約(当初から期間の定めのない雇用契約を結ぶのではなく、試用を目的とする有期労働契約を結ぶこと)という方法もあります。
そこで採用コンセプトを採用募集の活動を行う前に、しっかり固めておくことも大切です。採用コンセプトとは、採用活動に際しての企業の方針です。たてるべき方針のポイントを簡単にまとめると、次の3点に集約されます。
- ターゲットを明確にする
- 自社の魅力を伝える
- 自己選択できる情報を提供する
こうした情報を適切に届けることでミスマッチを避けることができます。
定着率を高めるには、特に上記3.の「自己選択できる情報提供」を応募者に対して行っておくことがポイントです。つまり応募者が自分で「この会社では自分に適した仕事ができるか?」を判断できるよう、自社の優れた良い面ばかりを強調して伝えない、ということです。過度な期待を抱かせないことで、入社後の失望を防ぐことができます。
そもそもインターンシップ生が集まるかどうか不安
「学生も知っている有名企業ではないのに、当社へインターシップに来たいと思う学生が集まるのか?」
独自の価値を追求している良い企業はたくさんあるのに、そんな企業へ優秀でやる気のある学生や若者が入社しないのは、社会にとっても損失です。学生さんには就職人気ランキングはひとまず横に置いて、視野を広げていろいろな会社を数多くみてみることをお勧めしたいですね。
とはいえ働いた経験がないので、「企業研究」にも限界があるのかもしれません。ですから企業には、学生へいかに「働く現場のリアルな情報」を提供できるかが問われるとも言えます。
そこでSNS(採用Facebookページなど)の活用は、コスト面でもコミュニケーション効率の面でもメリットは多いと思います。
もちろんSNSの運用を適切うためのリスク管理が必要なので、社員への教育をしっかり行っておくことがポイントです。(SNSのリスク管理についてはこちら>>過去記事「SNSのリスクを回避するために会社がとるべき対応とは」)
ですが、SNSを活用したことで「ターゲットの学生や若年層に親しみを持ってもらえるようになった」と実感する企業は多いようです。企業のメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 基本サービスの利用が無料
- 拡散機能で一度に多くの学生にプロモーションができる
- 職場や社員の雰囲気を伝えやすい
- 内定者フォローができる
もちろん、求職者(学生や若者)にとっても、情報を手軽に獲得できるというメリットがあります。
**
リスクを踏まえて正しい知識で継続的に運用すれば、SNSを採用活動ツールとして役立てることができます。
インターンシップに応募したい!と思う「見込み学生」を集めるのにも一役買うでしょう。
「この会社がいい!働いてみたい!」と学生のハートに強く訴えかけることができるように、自社の魅力をリアルかつダイレクトに伝えられる方法(インターンシップの実施、採用コンセプトの明確化、SNSの活用など)を考えたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
■提供中のコンサルティング
■顧問契約・単発のご相談を承っています
■役に立つ無料コンテンツ配信中
■ブログの過去記事